
「繰り返し間隔が長くなる、複雑になるという発表のようだが」「液状化の痕跡が理由で1099年の康和南海地震は内陸の地震という解釈になるのか」
昨年11月、都内で開かれた地震予知連絡会の南海トラフ巨大地震に関する研究発表で、さざ波が立った。その発生履歴について、これまでの定説を覆すことにもつながる検証作業の「途中経過」が明らかにされたからだ。
マグニチュード(M)8級の巨大地震が繰り返されてきた南海トラフでは、直近の1946年の昭和南海地震から日本書紀に残る684年の白鳳(はくほう)地震まで、おおむね100~200年間隔で9回の発生サイクルが知られる。史料の記述に加え、主に静岡以西の遺跡調査などで見つかった液状化跡や津波堆積物が証拠とされてきた。
だが、検証を進める東大地震研究所の古村孝志教授は、康和南海地震だけでなく、もともと疑問視されていた1498年の明応南海地震、1605年の慶長地震について、南海トラフでの発生を示す証拠が不足していると指摘。「康和」は内陸の地震、「明応」は存在せず、「慶長」は別の場所で起きた可能性があると疑義を唱える。これまでの南海トラフ地震の考え方に変更を迫るものだ。