20歳、神大生
変わる。前を向く。原発おびえた日々 転機・あの日から
社会 | 神奈川新聞 | 2016年4月13日(水) 17:02


5年前、中学2年生だった少年はこの春、20歳の青年になった。ふるさと福島を離れ、今は横浜の大学に学ぶ。すさまじい揺れと津波、原発事故におびえた日々の先には、気付きや出会いがあり、少しずつ変わっていく自分と広がってゆく世界があった。
身長は10センチほど伸びた。田村章悟さん(20)は今、神奈川大学(横浜市神奈川区)の法学部自治行政学科の2年生だ。親元を離れ、大学近くのアパートで1人暮らししている。
2011年3月11日は、通っていた福島県広野町立広野中学校の卒業式だった。先輩を見送って自宅へ戻り、一人きりの時に激震に見舞われた。夢中で高台の広野中へ避難し、生徒や先生と身を寄せ合いながら眼下に押し寄せる津波を見た。
幸い家族は無事だった。しかし、翌12日に東京電力福島第1原発事故が起き、一家は親戚のいる千葉への避難を余儀なくされた。
「震災が来て全部なくなっちゃった」。穏やかな日々の暮らしも、部活も、塾も、修学旅行も。第1原発から南へ30キロ圏内の広野町は緊急時避難準備区域に指定され、同年9月末の解除後は廃炉作業の最前線となった。
10月になり、南に位置するいわき市の中学校に間借りして再開した母校には、散り散りになった同級生のうち13人が集まった。