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ヘイトスピーチ考
時代の正体〈290〉国際人権基準に照らし 与党法案(下) 

社会 | 神奈川新聞 | 2016年4月13日(水) 16:56

外国人の人権擁護運動の歴史を振り返る渡辺英俊さん=9日、在日本韓国YMCA
外国人の人権擁護運動の歴史を振り返る渡辺英俊さん=9日、在日本韓国YMCA

 〈(差別的言動により)対象者が「多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている」(前文)というヘイトスピーチの害悪を認め、「喫緊の課題」(1条)であるとして許さないことを宣言する(前文)法案を提出した意義は大きい〉

 外国人人権法連絡会の緊急声明は自民・公明両与党のヘイトスピーチ解消法案に一定の評価を示し、他方で次のように記す。

 〈日本も加入している人種差別撤廃条約は、ヘイトスピーチを含む人種差別を禁止し、終了させることを求めており、国連の人種差別撤廃委員会が最優先で求めているのは人種差別禁止法である〉

 法制化が必要で、与党法案から抜け落ちた禁止規定を求めるおおもとの理由がここにある。連絡会共同代表で、在日コリアンの人権や戦後補償に関する訴訟を手掛けてきた丹羽雅雄弁護士が指摘する。

 「日本の外国人政策は出入国管理体制下、監視対象か労働力とする政策しかなく、人権保障政策がない。だから与党法案も人種差別撤廃条約をはじめとする国際人権基準の観点から書かれていない」

 1995年の加入から20年余、政府が条約に対応する国内法の整備を怠ってきた結果としてのヘイトスピーチの蔓延(まんえん)であるなら、新法は国際人権基準を出発点としなければ実効性を持ち得ず、国際社会の要請にも応えられない。

 実効性の薄さは、法案第4条「国及び地方公共団体の責務」にも表れている。

 「国は『責務を有する』だが、地方公共団体は『努めるものとする』となっている」

 これではヘイトデモの来襲に震える地域住民を安心させるに十分ではない。やはり人種差別撤廃条約は国だけでなく自治体にも差別をなくす義務を課している。

立法責任




 禁止規定はなぜ盛り込まれなかったのか。参院法務委員会で疑義を挟んだのは自民党の西田昌司議員だった。

 「一般論として禁止規定を作ろうとすると範囲を明確にしないといけない。明確にすると、それ以外は言ってもいいんだというお墨付きを与えることになるのではないか」

 師岡康子弁護士は強調する。

 「侮辱罪や威力業務妨害罪といった、表現を制限する既存の法律でも同じ問題がある。だからといって禁止せず、許してはならない害悪を放置するというのは本末転倒だ」

 害悪を違法とすべき理由として、差別団体「在日特権を許さない市民の会」のメンバーらが京都朝鮮第一初級学校で行った街宣活動を表現の自由を乱用した違法かつ、人種差別撤廃条約違反と認定し、高額の損害賠償を命じた判決を挙げた。判決文では、不特定多数の集団へのヘイトスピーチに関する国内法の不備が指摘され、新法の必要性が提起されていた。

 「不特定多数に向けられたヘイトスピーチでも、人間の尊厳を傷つける害悪があることに変わりはない。国会は最高裁で確定した判決の要請に応えるべきだ」

成立の先



 声明を発表した会見には、長く外国人の人権問題に携わってきた共同代表3人が席を並べていた。

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