1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 時代の正体〈289〉「違法宣言」で実効性を 与党法案(上)

ヘイトスピーチ考
時代の正体〈289〉「違法宣言」で実効性を 与党法案(上)

社会 | 神奈川新聞 | 2016年4月12日(火) 09:10

緊急声明について説明する師岡弁護士(左)=東京都千代田区の在日本韓国YMCA
緊急声明について説明する師岡弁護士(左)=東京都千代田区の在日本韓国YMCA

 自民・公明両与党が提出したヘイトスピーチを解消するための法案について、弁護士や研究者でつくる外国人人権法連絡会は9日、緊急声明を発表した。在日外国人などへの「差別的言動」は許されないものと宣言する意義を認める一方、実効性を確保するため禁止規定を盛り込むことなどを求めている。声明を発表した会見から与党法案の課題を追った。

 8日に参院に提出された与党法案の正式名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」。立法の趣旨を述べた前文は以下の通りだ。

 〈我が国においては、近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている〉

 〈もとより、このような不当な差別的言動はあってはならず、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではない〉

 〈ここに、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する〉

 旧民主党など野党が昨年5月に提出した人種差別撤廃施策推進法案と同様、罰則のない理念法だが、大きく異なっているのは、対象がヘイトスピーチに限定されていることと、禁止規定がないことだ。

狭い定義



 法案提出翌日の9日、都内で会見した同連絡会メンバーで外国人の人権問題に詳しい師岡康子弁護士は緊急声明=別項参照=について「最低限、修正してほしいものしか盛り込んでいない」と前置きし、続けた。「違法と宣言しなければ実効性は薄い。これは大きな点だ」

 声明でも〈ヘイトスピーチ対策に限定するなら、何より実効性が求められる。そのためには少なくともヘイトスピーチを違法と宣言することが不可欠である。違法としないと、地方公共団体が具体的な制限を躊躇(ちゅうちょ)する危険性が高い〉としている。

 「明らかなマイナスの作用を生む。削除を求めたい」と師岡弁護士が疑問を投げ掛けるのが、ヘイトスピーチの定義で「適法に居住する本邦外出身者」とされた表現。

 声明では〈「適法に居住する」との要件は、「不法滞在者」とされた外国人に対する差別の扇動を促す危険性がある〉と指摘。そもそもの「本邦外出身者又はその子孫」という定義についても、アイヌ民族や沖縄県民、部落出身者に対するヘイトスピーチが行われている実態を踏まえ、「『本邦外出身者』では狭すぎる。人種差別撤廃条約と憲法に照らして、人種、皮膚の色、世系もしくは社会的身分、または民族的もしくは種族的出身を理由とするものも対象に含めるべきだ」と提案する。


 

被害実態


 師岡弁護士は法案の意義についても言及した。

 「在日コリアンへの差別が深刻な被害を生じさせているということを踏まえた対策法案が、与党から出てきたのは戦後初のこと。政府がこれまで差別や差別的言動があること自体、認めてこなかったことを考えれば、わずかな一歩だが、ここまではきた」

 この間、ヘイトデモの標的になっている川崎市川崎区桜本の在日コリアン3世、崔(チェ)江以子(カンイジャ)さんが参院法務委員会で意見陳述と参考人質疑に立ち、議員団による桜本の視察も行われた。「被害者の声は与党の議員の心を打っている」

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら

ヘイトスピーチに関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング