【時代の正体取材班=石橋 学】関東大震災時の朝鮮人虐殺を「殺害」と記述する横浜市教育委員会発行の中学生向け副読本の問題をテーマに、日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部は28日、横浜市中区のかながわ労働プラザで講演会を開く。
講師は市民団体「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」(北宏一朗代表)の後藤周さん。この問題を巡り、保守系市議の要求に沿って「虐殺」の記述を「殺害」に書き換えるなどしてきた市教委を批判してきた。元市立中学校教諭の後藤さんは歴史教育だけでなく、人権教育の後退という観点からも記述を戻すよう市教委に求めている。
問題の発端は2012年7月に横山正人市議(自民)が市会常任委員会で行った質問。朝鮮人虐殺における軍隊・警察の関与を示す記述と「虐殺」の表記について「歴史認識や外交問題に影響を及ぼしかねない」と指摘した。従来の記述が外交問題になったことはなく、虐殺の表記も多くの教科書で使われているにもかかわらず、市教委はその場で改訂を約束。13年度版から軍隊・警察の記述を削除し、「虐殺」を「殺害」に書き換えた。
横山氏は日本最大の右派組織「日本会議」の地方議員連盟副会長を務める。
その後、やはり保守系の小幡正雄市議(維新・ヨコハマ会)の問題提起から、副読本自体が大幅にページ数を減らしてリニューアルされることになり、昨年9月には、その原案で虐殺の史実に一切触れられていないことが判明。歴史を学ぶ会や歴史研究者、市民らから市教委に多くの批判が寄せられ、史実自体は記載されることになったが、「根拠のないうわさが流れ、朝鮮人や中国人が殺害される、いたましいできごとも起こりました」との表現にとどまっている。市教委は本年度中に新しい副読本を生徒全員に配布するとしている。
JCJ神奈川支部は「虐殺の事実そのものに触れられていない草稿が練られたことが歴史修正の歯止めのなさを物語っている。副読本を巡る市教委の対応が示す時代の危機を共有したい」と参加を呼び掛けている。
午後3時から。参加費500円。問い合わせは、同支部の伊東さん電話090(2753)8012。