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企業の安全義務に一石・地裁川崎支部
過労で事故死、審判は

社会 | 神奈川新聞 | 2016年3月31日(木) 09:59

勤務先からの帰宅中にミニバイクの事故で亡くなった渡辺さん
勤務先からの帰宅中にミニバイクの事故で亡くなった渡辺さん

 会社から帰宅途中の交通事故は過労死と認められるか-。横浜地裁川崎支部で審理されている過労裁判の行方に、関係者の関心が集まっている。亡くなった男性の遺族は、帰宅途中のバイク事故は長時間勤務などが原因と主張、一方の会社側は休憩時間は確保していたなどと全面的に争う姿勢を示している。同様の裁判で過去に過労と事故の因果関係が認められたのは全国で1例のみといい、立証されれば企業の安全配慮義務をめぐる責任のあり方にも影響が広がりそうだ。 

 東京都稲城市の渡辺航太さん=当時(24)=は2014年4月24日朝、会社から帰宅中に川崎市麻生区の県道でミニバイクの運転を誤り、電柱に激突し死亡した。遺族は、事故は長時間労働による過労が原因で、会社は安全配慮義務を怠ったとして損害賠償1億651万円を求め、昨年4月に提訴した。

 過労が争点となる裁判では、厚生労働省が定めた「過労死ライン」が基準となる。時間外労働が過去6カ月に月80時間を超えたケースや、過去1カ月に100時間を超えた場合に、過労と死亡の因果関係が強まるとされる。原告は死亡直前の1カ月間に100時間超の残業があったほか、事故前日から続いた22時間に及ぶ勤務が事故の原因となったと主張する。

 これに対し、被告の植栽装飾会社グリーンディスプレー(横浜市都筑区)は、長時間かつ不規則な労働を一定程度認めながらも、休憩や仮眠をとっていたとして「原告側の労働時間の算出はあり得ない前提に基づく」と反論する。

 ただ、仮に原告の主張通りに過労状態が認められたとしても、依然高いハードルが待ち受ける。過労と事故の因果関係の証明だ。

 事故は「過労による居眠りが原因」とする原告の主張に対し、被告は「バイクの操作ミス」と強調。バイク通勤についても、原告は深夜早朝の出退勤のため必要不可欠で会社も容認していたとするが、会社側は「バイク出勤は(渡辺さんの)独断だった」との見方を崩さずにいる。

 トラックやバス、タクシーなどの職業運転手を除き過労と事故の因果関係が認められた判例は、鳥取大医学部の研修医が徹夜勤務後に車で事故死した1例のみという。この裁判を担当した松丸正弁護士によると、有力な弁証となったのは科学雑誌「ネイチャー」に掲載された論文だった。

 「断眠(起きている時間)」と作業能率の関係を検証した研究で、17時間断眠すると血中アルコール濃度0・03%、24時間だと0・09%と同程度の状態になると結論付けた。松丸弁護士は「道交法ではアルコール濃度0・03%で酒気帯び運転と判定される。事故当日に22時間近く起きていた渡辺さんは飲酒運転と同じような状態だったと推察できる」と指摘する。

 原告側は次回5月の公判で、渡辺さんの事故について過労と居眠りの因果関係に関する専門家の意見書を提出する予定だ。原告代理人の川岸卓哉弁護士は「過労や不規則労働の末の交通事故は潜在的に多い。会社側の安全配慮義務がそこまで及ぶことが立証できれば、今後の労働環境整備にもつながるはず」と話している。

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