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民主主義考
時代の正体〈271〉高校生のデモ(下) 政治をもっと語ろう

社会 | 神奈川新聞 | 2016年3月17日(木) 09:31

デモ出発の合図を出すぴかさん=代々木公園
デモ出発の合図を出すぴかさん=代々木公園

デモ出発の合図を出すぴかさん=代々木公園
デモ出発の合図を出すぴかさん=代々木公園

 日曜夕刻の東京・渋谷。高校生のデモ行進が車道を埋める。足を止め、目の前を通り過ぎる集団に携帯電話のカメラを向ける沿道の人たち。参加者は手を振りながら、一斉に大声を上げ、繰り返した。

 「一緒に歩こう」

 埼玉県八潮市から買い物に来ていた高校2年生の山尾あかりさん(17)は友人と飛び入りで加わった。「楽しそうだから」。屈託のない笑みがぱっと広がる。

 安全保障関連法の話はニュースで見聞きしていた。反対の声が根強いなかで決まったことに「おかしいな」とは思っていた。

 初体験のデモで心に残ったのは「同世代の高校生が『おかしいと思うことはおかしいと言おう』とスピーチしていたこと」。部活でも、教室でも思ったことは口にしないことが多い。「人間関係がぎすぎすしてしまうから」。だから「新鮮に感じた」。今度はきちんと勉強してから参加してみたいという。

 年配の女性2人もデモに加わった。参加者は「ようこそ」と声を掛け、拍手で招き入れる。デモの列は長くなり、高校生だけではなく、さまざまな世代が声を上げていた。

縮んだ距離


 デモを主催するグループ「T-nsSOWL(ティーンズソウル)」のメンバーで、デモを先導していた高校3年生のぴかさん(18)はデモや政治と無縁の高校生活を過ごしてきた。生活の中心は合唱部の部活と勉強。「関心がないので、政治のニュースは頭に入ってこなかった。デモは遠い世界の話のようだった」

 昨年7月、国会前で行われていた抗議活動に母親(54)と一緒に参加したことがきっかけだった。テレビのニュースで安保関連法案をめぐる国会審議が混乱していることを知り、「憲法の解釈を簡単に変えていいのか、という違和感」を覚えた。ニュースで話題にもなっていた抗議活動とはどのようなものか、まずは「遠くから見てみようと思った」。

 国会前では大学生らでつくるグループ「SEALDs」(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)のメンバーが交代でマイクを握り、声を上げていた。「本気で世の中を良くしたいという思いが伝わってきた。涙ぐみながら語る人もいて、真剣さに心が動かされた」

 人ごとのように距離を置いていた自分とは全く違っていた。そこで「スイッチが入った」。

母にも影響



 シールズに触発された高校生が中心となってつくったティーンズソウルのメンバーに短文投稿サイト「ツイッター」で連絡を取った。翌日から、メンバーとともに国会前で抗議活動に連日参加した。

 学校帰りに制服で抗議集会に通い、グループの仲間と政治問題を議論した。マイクを握って思いを語り、テレビや新聞の取材を積極的に受ける仲間を見ているうちに、「『反対』と心の中で思っているだけではなく、発信しなければ思いは誰にも伝わらない」と考えるようになった。

 当初は友人には分からないよう、デモに行っていることは黙っていた。「学校は日常で、デモは非日常。いつも通りの日常を壊したくないと思った」

 大声で抗議活動を続けるうち声がかれ、合唱部の仲間からどうしたのと聞かれた。恐る恐る「実は国会前の抗議活動に行ってるんだ」と打ち明けた。「そうなんだ」とあまり反応がなかった。昔の自分みたいだ、と思った。

 デモでは横断幕を持ち、先頭に立つようになった。昨年9月10日に国会前で開かれた抗議集会では、初めてマイクを握ってスピーチをした。

 「うそをつき、民意を無視する政権は望んでいません。そんな政治を続けるなら、僕は闘い続けます。どんなにいろいろ言われても闘い続けます。なぜなら、それだけこの法案が欠陥だらけで憲法違反であり、黙って見過ごすわけにはいかないからです」

 緊張したが、「思いを多くの人に伝えられた。たった7カ月で、大きな変化があった。自分から発信する側になるとは思ってもみなかった」。

 どうすれば自分のように政治に関心がなかった人のスイッチを入れられるか、考えるようになった。「関心がない問題については、どんな言葉も頭に入ってこない。押しつけるようなやり方はせず、デモをやっていることを伝えて、『良かったら参加しない』とやんわりと誘うことにした」

 デモの列がゴール地点に着き、ぴかさんはほっとした表情を浮かべていた。母親も参加していたが、息子の邪魔にならないよう、声を掛けずに帰宅した。

 母親は「高校生だけではなく、大人ももっと政治の問題に関心を持つべきだと思ってきた」と話す。

 安保関連法の反対集会やデモに参加し、抗議活動を続けてきた。意を決して、友人に「デモに行っている」と伝えたことがあった。政治の問題を話題にするきっかけにしようと思ったが、「そうなんだ」の一言しか返ってこなかった。以来、政治の問題を話題にすることに慎重になっていた。

 熱心に活動する息子の変化に影響を受けてきた。「政治の話を遠い世界のように考えて、話すのを控える人が多いが、おかしいことをおかしいと言えるのはいいこと。今後は息子に負けないよう、友人に声を掛けようと思っている」

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