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予知はどこへ 読めぬ巨大地震(3)人命守る「予測」とは

社会 | 神奈川新聞 | 2017年1月20日(金) 12:36

予知研究の必要性を訴える楠城特任准教授=昨年10月15日、静岡市葵区の静岡県地震防災センター
予知研究の必要性を訴える楠城特任准教授=昨年10月15日、静岡市葵区の静岡県地震防災センター

 「阪神大震災から20年以上がたち、いろいろなアプローチがあることが分かってきた。今こそ、地震予知を研究しなければ」

 地震活動の変化、前震、衛星利用測位システム(GPS)による地殻変動の検出…。近年の観測・研究成果を挙げつつ、静岡県立大の楠城一嘉特任准教授は慎重に言葉を選ぶ。「予知には批判があり、実力が足りないと言われる。まだ十分な研究はできていない」

 昨年10月、静岡県地震防災センター。大学で地震予知部門を預かる楠城特任准教授は、静岡でこそ予知を目指さなければならないと強調した。「揺れの最中に津波が来る。緊急地震速報は間に合わない。だから地震が起きる前の情報を防災に生かす研究が必要だ」

 同大などと歩調を合わせる東海大海洋研究所(静岡市清水区)は、駿河湾沿いに立地。所長の長尾年恭教授は昨年2月、横浜でのセミナーでこう自己紹介した。「東海地震の起きる場所の真上で、地震予知という現在極めて評判の悪い学問をやっている」

 例えば、有力な手掛かりとみる地震の「静穏化」。「嵐の前の静けさは大地震の先行現象だ」。と同時に難しさも感じている。「特定の手法で予知できるということではない」「地下で何が起きているかを正しく伝えることは今でも可能だが、地震がいつ起きるかは現在の力では言えない」

 東海地震予知の見直しに向け、昨秋に始まった中央防災会議作業部会の議論には、予知研究の到達点を見極める下部組織の調査部会の委員として関わった。昨年11月にまとめた見解は、同じ顔ぶれでその3年前に議論し、公表した報告書と変わっていない。「確度の高い地震の予測は難しい」

 「予知」ではなく、「予測」と表現した理由について、調査部会座長で作業部会の委員も兼ねる日本地震学会会長の山岡耕春・名古屋大教授は言う。

 「予知という言葉は恣意(しい)的に使われる場合があり、定義を巡る議論にエネルギーを割かれてしまう。『1週間以内の』といった修飾語を付ければ予測で事足りるので統一した」

 調査部会の結論については、「予測は経験則が重要で、一発必中は難しい。が、頑張ればある程度できるという意味でもある」と説明。「確実に地震が起きると言うことは依然として難しいが、1週間以内に5%といった表現はありうる」とし、社会の理解を得た上でそうした情報をコストの伴わない防災対応に生かす手もあるとみている。

 
 

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