横浜市立岡村中学校個別支援学級担任の松本早也香さん(26)は、東京電力福島第1原発事故で避難指示区域となった福島県南相馬市の小高区出身。地元で中学教諭になることを目指していたが、大学3年の時、東日本大震災が発生、教員採用試験も中止された。方針転換を余儀なくされ「せめて海がある町で」と選んだのが横浜だった。故郷への思いを抱えながらも「今いる場所を大切にしたい」と話す。
「カレンダーの曜日の並びって、何年かに1度、ぐるっと回ってリセットされるんですよね」
放課後の教室で、松本さんがつぶやいた。「今年の3月は、5年前と曜日が同じ。11日が金曜日。だから、カレンダーの並びだけでなく、津波も原発事故も全部リセットされ、何も起きなかったことにならないかなあ、なんて」
松本さんは2012年春、青森県の弘前大を卒業し、横浜で教師としての第一歩を踏み出した。いまでは新任から3年間一緒だった生徒の顔触れも入れ替わり、吹奏楽部ではメーンの顧問を任されるようになった。自身も南相馬市内の強豪中学校でクラリネットを吹いていた経験を生かして指導にあたり、多忙な毎日を送っている。