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「楽観」事件招く 臨床心理士が認識 川崎中1殺害公判

社会 | 神奈川新聞 | 2016年3月5日(土) 02:00

 川崎市の中1男子生徒殺害事件で、傷害致死罪に問われた無職少年(18)の裁判員裁判第3回公判が4日、横浜地裁であり、少年を情状鑑定した臨床心理士が事件当夜の心理を説明した。殺害を主導した主犯格の少年(19)=殺人などの罪で有罪確定=との不仲を認識しながら、被害生徒=当時(13)=を引き合わせたのは、不遇な成育過程で培った「楽観」に由来するとの見解を示した。

 鑑定人は、2度にわたり海外で単身生活を強いられた少年が高校進学後、居場所や安らぎを求め、非行仲間に接近したと指摘。とりわけ、互いに母親が外国人の主犯格とは「ハーフ同士の心の絆」が芽生えたと分析した。中学時代にいじめや暴力に屈服した疎外感も共通する。

 一方、2人が不仲になった事件1カ月前から、被害生徒と兄弟のように親密になった。ただ、主犯格に対する「後ろめたさ」も生まれ、2人の仲直りを期待したという。

 事件当夜に主犯格からの暴力を心配しながらも被害生徒を呼び出した「楽観」や「危機意識の乏しさ」は、不遇を耐え続ける成育過程で生じた無力感が作用していると説明。抵抗しながらも主犯格に服従したのは、「自発的な思考力や行動力の混乱が始まり、自分の命を守るため」との考えを示した。

 鑑定は弁護側が請求し、地裁が依頼した。それぞれ刑事罰と保護処分を求める検察、弁護側双方は、少年刑務所と少年院での処遇を裁判員に説明。被害生徒の父母と祖父は意見陳述し、「弟のような息子をなぜ助けてくれなかったのか」と訴えた。公判は7日に結審する。

「なぜ止めぬ」 被害生徒の両親



 「兄のように慕っていた少年に助けてもらえず、何度も何度もカッターで切られた息子はどんなに悲しかっただろう」。4日、被害者参加制度で意見陳述した母親はハンカチを握りしめ、涙ながらにわが子への思いを語った。

 事件で起訴された3人のうち、被害生徒と最も親しかったという少年。前日の被告人質問で「罪を背負い、毎日謝り続けたい」と語ったことに対し、「これから先、どれだけ生きるつもりなのか。息子の時間を奪っておいて何を言っているのか」と語気を強めた。

 弁護側が複雑な成育歴によって少年は精神的に未熟だったと主張していることには、「未熟だからとか、育ってきた環境がとか、息子にも、私たちにも関係ない。息子の命だけでなく、家族の幸せや希望、生きていく楽しみも奪った」と、声を絞り出した。

 父親も、「傷ついた息子を見て、どうして止めようと思わないのか。人間として持っているはずの気持ちがあるとは思えない。本当ならば、息子と同じ恐怖、苦しみを味わわせてやりたい」と肩を震わせた。

 公判に証人出廷した少年の母親と祖母が口にした謝罪の言葉に対しては「共通しているのは、話の中に息子が見えないということ。息子の命がそれだけちっぽけなものなのだと感じた」と怒りをあらわにした。

 先月あった主犯格の少年の判決後に体調を崩し、数日前まで入院していたことを明かし、途切れ途切れに言葉をつないだ。「正直、精神的、体力的にものすごくつらい。それでも私は、犯人が奪った息子の命に寄り添うためにここに来た」

 傍聴人らのすすり泣きが響く中、少年は背中を丸めて椅子に腰掛け、終始うつむいたままだった。

 
 

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