県内で個別計画の策定が完了している自治体は、伊勢原市、山北、愛川町の3市町。その多くが自治会など地区組織が主体となって要支援者を支える体制を構築している。一方、作成が難航している自治体からは、支援者側の高齢化や負担増を懸念する声があり、災害弱者をめぐる「共助」の体制が思うように形成できない実態が浮かび上がった。
震災前の2007年度から個別計画の作成を進めていた伊勢原市は、要支援者から申請があったすべての102自治会で策定。市がまとめた要支援者名簿を基に各自治会が支援者となる住民を選び、避難の経路や場所を定めている。自治会が新たな要支援者の追加と名簿の更新も行っている。
市の担当者は「当初は自治会の理解が得られずに苦労したようだが、地道に粘り強くお願いして根付いてきた」と実感する。
昨年末に策定した愛川町は、行政区の区長や地域の民生委員の積極的な協力が得られている。震災を題材にした映画上映会などのイベントや防災訓練にも力を入れており、「市民の意識向上につながっている」(同町)という。
一方、作業が思うように進まない市町村も。高齢者が多く支援の担い手が不足しているという横須賀市は、「災害時にきめ細かな対応ができるので計画はあった方がいい」と認識しながらも、「地域に任せるのは難しい」と苦慮する。このほか、「支援者となる負担を重く受け止め、要支援者からお願いされても断ってしまう」(南足柄市)、「個人情報の扱いに困ってしまう」(横浜市)といった声も報告されている。
ただ、計画を策定しても課題は残る。愛川町は「訓練などで検証を重ね、さらに実効性を高めていきたい」としている。