日本の死刑制度について考えるシンポジウム「死刑の倫理を問う」が27日、横浜市中区の関東学院大学関内メディアセンターで行われた。強盗殺人事件で死刑判決が確定した後、再審開始決定で釈放された袴田巌さん(79)の姉秀子さん(82)らが講演し、死刑制度廃止を訴えた。同大法学研究所と法学部の共催で、約80人が参加した。
秀子さんは、釈放されてから2年近くたった巌さんの近況を「1人で散歩に出かけるのが日課で、自宅で穏やかな日々を過ごしている」と説明した。だが、拘禁症状によって「今も意味の分からないことを口にしている。誰をうらんでもしょうがない。長生きしてもらおうと思い頑張っている」と語った。
また、法律を学ぶ学生に向けて「どんなことがあってもうそを言わないことが大事。冤罪(えんざい)がない時代がいい」と語る巌さんのメッセージ映像が流された。
コーディネーターを務めた関東学院大の宮本弘典教授は、被害者感情への共感を背景に国内では死刑制度の存続を求める意見が大勢を占めているが、欧州連合(EU)諸国では死刑制度がないことを紹介。「冤罪が生まれる可能性があるのに、治安維持のために死刑制度を存続させていいのだろうか」と訴えた。
シンポジウムでは、袴田巌さんの支援活動を続けている寺澤暢紘さん、弟を殺害した加害者の死刑停止を求める活動をした原田正治さん、処刑された元死刑囚の再審請求運動に取り組む古川龍樹さんの3人が、パネリストとして登壇した。