
川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で2014年11~12月、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、うち当時87歳の男性を投げ落として殺害したとして、殺人容疑で逮捕された元職員の男(23)が、同年12月に転落死した女性2人の殺害も認めていることが16日、捜査関係者への取材で分かった。
県警によると、男はいずれの時間帯にも勤務しており、幸署捜査本部は連続殺人事件の可能性もあるとみて、他の2件への関与を捜査。男性の事件について動機などの取り調べを本格化させる。男は男性への殺害容疑に関し「殺そうと思ってやった」との趣旨の供述をしているという。
県警が同一施設で起きたと気付いたのは3人目の死後。情報が共有できていなかったことが原因とみられ、捜査関係者は「結果的にまずい初動捜査だった」としており、検証が求められそうだ。
県警は16日未明、逮捕についての説明で、3人の転落死のいずれも「必要がない」として司法解剖せず、同一施設で起きたことに気付いたのは14年12月31日に3人目が亡くなった後だったと明らかにした。
捜査関係者によると、こうした反省から昨年8月、変死事案が発生した際はデータベースで建物名を検索し、過去にも起きていないか確認するよう改善した。
昨年5月、別の窃盗容疑で男を逮捕。同容疑者が転落死に関与した疑いが浮上した。今年1月から数回、任意で事情聴取していたが、今月15日に男性を殺害したことを認めた。
逮捕容疑は14年11月3日午後11時ごろから同4日午前1時50分ごろまでの間、4階ベランダから男性を投げ落とし、内臓破裂で殺害した疑い。
◆「あってはならないこと」
介護サービス大手「メッセージ」は16日、子会社が運営する川崎市の老人ホームで入居者を投げ落としたとして、殺人容疑で元職員の男(23)が逮捕されたのを受け、ホームページに「決してあってはならないことで、とても重く受け止めている」とのコメントを佐藤俊雄社長名で出した。
「亡くなられた入居者の冥福を祈り、遺族の皆さまに心よりお悔やみ申し上げます」とした。
捜査に不信感も
殺人容疑で元職員の男(23)が逮捕された川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」では16日午前、報道陣が多数集まった。施設職員は対応に追われ、運営会社「積和サポートシステム」(東京)の幹部が午後に施設で取材に応じる見通しと明らかにした。