
被災障害者支援を行っている認定NPO法人「ゆめ風基金」(大阪市)が作成・無料公開しているワークショップ用シート「避難所運営シミュレーション」が全国の防災研修で活用されている。特別な道具や資料を用意する必要がなく、地域の障害者と一緒に対応策をじっくり話し合えるのが特徴。同基金理事の八幡隆司さん(58)は「障害者は避難マニュアルや防災訓練の対象からも抜け落ちてしまいやすい。地域や職場でも課題と向き合ってほしい」と呼び掛ける。横浜市内で行われた講座をのぞいた。
「視覚や聴覚に障害がある人が避難所に来たらどう対応しますか」
4人一組で机を囲む参加者に向かって八幡さんが問いかけた。震度7の地震発生を想定したシミュレーション。質問シートや体育館・敷地全体の見取り図、校舎の教室案内、備蓄品リストなどを参考にしながら話し合う。1月に横浜市内で行われた講座の一場面だ。
参加者の約半数が地域住民や会社員で、障害や福祉に関する予備知識はない。戸惑いながら「出入り口やトイレに近い方が生活しやすいのかなあ」「校舎の教室など、体育館以外の場所に避難してもらうのはどうだろう」と意見を出し合った。
絶対的な正解はないが、この日は八幡さんが被災地での支援経験をもとにアドバイスした。「まず体育館の壁沿いに通路を確保することが大切。視覚障害者は壁伝いの方が歩きやすい。壁は掲示板代わりに利用される場合が多く、音声情報に頼れない聴覚障害者にとっても情報源となる」