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【証人尋問】(下)「地道な働きかけで改善の余地ある」 弁護側証人尋問で鑑定人 川崎中1殺害

社会 | 神奈川新聞 | 2016年2月3日(水) 19:18

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で昨年2月、市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件で、殺人と傷害の罪に問われたリーダー格の無職少年A(19)の裁判員裁判が3日、横浜地裁(近藤宏子裁判長)で開かれた。

 検察の被告人質問などに続いて、弁護側の証人が出廷した。精神鑑定を務めた大学教授は、少年Aの自己中心的な人格について「いわゆるこの年代の子は可塑性(かそせい)を持っていて私との関係性でも当初と中盤、終盤で変わってきた。軽々に言えることではないが、地道な働きかけによって改善の余地はある」と述べた。

 4日は別の証人の尋問が行われ、論告求刑と最終弁論の後、結審する予定。

 主なやりとりは主な通り。

弁護人-証人尋問


 -本人が自分の周りの環境にどう関わっていいか分からないという状況の中で実行行為を継続した。「安心感」「安全感」が備わっていないというか、獲得していないということか。

 証人 もともと獲得に問題がある。安心感・安全感は危機に際して危機状態から脱するために安心に依存するということ。心理学では「アタッチメント」というのですが、小さな子どもが危機に際し、そばにいる親にぴったりくっつくところからきている。これは人間だけでなく、他の動物でもある行動です。ただ、ひっつくということは、成長するとともに、いちいちひっつかなくなる。中学生、高校生になってそういうことはしないですが、それは成長に伴い、相談するなど、空間的な間があってもアタッチメントの経験というのはある。守られるという経験です。A君は乏しかったということ。

 加えて、中高でのエピソード(地元の不良グループから仕返しを受けるなど)が、今回の事件につながり本人を脅かすに至っている。自分を脅かしたのは被害者であるとし、そこに転嫁していった。ところが、抱いている危機的状況を脱しようと被害者に向かっていくことでさらに危機的状況から脱することができなくなっていくという自己矛盾に陥っている。

 -(地元の不良グループの)Xからの恐怖を生んだ男子生徒へ転嫁していくというのは、Xらへの激しい恐怖をひもとくと、もともと安心感・安全感を獲得していなかったからなのか。

 そのような安心感・安全感のアタッチメント対象を持っているかどうか、ということ。危機に際し、環境を当てにして危機を脱するということが通常われわれがやっていること。どこかに駆け込んだり、相談したり。そうした環境がA君には乏しかった。他者に対し、自分を理解してもらうという経験が乏しかった。中学校での出来事でも、どこにどうすれば解決できるのか確信が持てなかった。本人が言語化できていない部分もあるが、危機状況から脱するにはどうすればいいか分からない。地元の不良グループが家に押しかけてこられた時も警察が対応したようだが、結局どうにもならなかったと思っている。そうしたことで相当追い込まれたということにつながっている。

 -安心感・安全感が事件直前に脅かされたが、そもそも備わっていないということか。恐怖との関係は。

 何かあったとき、例えばお母さんのことを言われたとき、本人は反撃した。そういうことに対して本人の怒りは十分に扱われなかった。先生も親もちゃんと扱わなかった。後から分かった事だが、これが典型的なエピソード。自分を理解してくれる、受け止めてくれるということがなく、外側に頼るより、自分で解決するようになっていく。

 自分で、自分のやったことで危機に追い込まれて、だからどうしていいか分からない。本人が『どうしていいか分からない』というのは、まさにそういう世界のことを言っているのだと理解しました。

 -客観的にはやめればよかったのにやめられなかった。今後、彼をどうすればいいのか。

 いろいろなことがあり、厳しくしつけられるという体験があり、(親からの)暴力的行為があった。複雑で難しい。そもそも暴力的な素質がある人もいる。遺伝子的研究も進められている。一方で、暴力は学習するという見方があり、それは他人が暴力を振るっているのを見る場合と、自分がされる場合とがあり、A君は自分もされていた。自分の体験で、言葉ではなく暴力で対応するということを学習するという側面はある。

 -A君の両親がAに関わっていくのが望ましいか。施設に行った場合。

 決して両親はA君をないがしろにしたわけではないと思う。また、ほったらかしにしていたわけでもない。残念なのは言葉を介在させてのやりとりが少なかった。A君自身も積極的にしゃべろうという人ではない。だが、いまA君自身に自分を語る部分が出てきている。親御さんも面会を続けている。そういう中で、A君の心の声に耳を傾けていくというところを出発点としたらいいと思う

〈弁護人が交代〉

 -今回の逮捕・拘留の間の内心と、法定での証言は変わっている。先生の面接の中で感じたことは。事実関係についての発言はどうか。

 事実に対しては聞かれたことには最低限答えるということ。言っていることにうそはないだろうな、と思う。

 -内心に踏み込んだときは。

 身構えたようなことはある。内面に踏み込むと身構える。

 -変化は。

 少しずつ内面に目を向けながらこれはしゃべってもいいかななどと考えながら、という印象。

 -内心を聞くとき具体的にどう聞くのか。

 われわれの面接は大きく分けて二つの聞き方をする。一つは、どっちですか、とイエス、ノーで答えられる質問。もう一つは、オープンドクエスチョンといって、考えないと答えられない質問です。できるだけオープンドクエスチョンで質問します。あとはこの出来事は、と焦点を絞って聞く。聞いて、A君が答えて、そこで私が疑問に思ったことをまた聞く。なぜこうしたことがしてしまったのか。考えて、分からないところは宿題として、次の面接のときにまた聞く。その繰り返し。

 -内心の質問を繰り返していって、どういう対応になったか。

 彼との間の信頼関係については、当初からすると内面のことを話した。やり返されるのが怖かったという、当初より、そうした内面を出していいかと思ってくれた。

 内面のことを言葉にするということは、実は大変なこと。表現力の限界はあるけれど精いっぱい話してくれた。特に後半の3回は。

 -内心について、新しい事が出てくるという…

(検察官から「異議あり!」の声)

 検察官 証言の変遷について聞いているのであれば、証言の証拠能力について証人にはその適格はありません。証言の変遷について一方的に尋問するのは不適切。

 弁護人 今回の証言を聞きたいというか、内心の真意にどのような過程でアプローチしていったのかを確認しているのであって異議は当たらない。

 裁判官 公判での供述と公判前の供述を比較しようとしているのではあれば適切ではない。証人が面接したときのことについて聞くなら特に異議はない。質問を続けるか、やり直すかしてください。

 -本人と面談をしていく中で内心について、自分の中で言語化できたのか。

 検察官 検察の調書が疑わしいということを前提としているような尋問だ。そもそも調書にしても何十時間も聞き取り、基礎としている。不適切な尋問です。

 裁判官 精いっぱい話すようになったということはすでに言われています。

 弁護人 はい、結構です。以上です。

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