
横浜市内の製造業の技術や製品を医療分野で活用してもらうため、医療機器メーカーとの連携を促す取り組みを、市と横浜企業経営支援財団(IDEC)が続けている。2013年に立ち上げた「横浜医工連携プロジェクト」で、1月28日には都内で3度目となる展示会と初の商談会も開催。既存の市場や取引が縮小傾向にある中、新たな販路を開こうと参加した16社が自慢の技術をアピールした。
「市場に入り込めるチャンスはきっとあるはず」
そう語ったのはニットー(同市金沢区)の藤澤秀行社長。オフィス家具などを手掛けてきたものづくりの延長で、手術時など立ち仕事の多い医師の負担を減らす目的の装着器具「ウエアラブルチェア」を出展。
太ももから足首にかけてフィットするよう設計した特殊な板を装着することで、中腰になった際に下半身を支える製品だ。藤澤社長は「患者に使われる医療機器は法申請などが必要となるが、製品は椅子や台車と同じ周辺機器の一つにすぎない。周辺機器環境の改善という切り口で医療分野を開拓していきたい」と意気込んだ。
既存技術を生かした製品で取り組むのはJMC(同市港北区)も同様だ。展示したのは、医師が手術前のシミュレーションなどに使う想定の心臓のシリコン製3D模型だ。従来から取り組んできた3Dプリンター事業のノウハウを生かしたという。担当者は「データがあれば本人のリアルな臓器を再現できる。手術の質向上に貢献できるほか、医学部生の研修利用のニーズもあるはず」。共同研究した大学などと連携し市場開拓を進めていく考えだ。
大学との連携では、ゼオシステム(同市神奈川区)が、特殊なセンサーを内蔵した容器に排尿することで量や速度を調べる装置を紹介。健康状態の確認などにその計測値を生かしたいと考える医療関係者のニーズに応えたものだという。下川三郎社長は、「発売に向け必要な申請などを経て事業化にこぎ着けたい」とした。
展示会は盛況で、訪れた医療機器メーカーが熱心にメモを取る姿が見られた。今回が初開催となった商談会も、出展社とメーカー間での商談は37件に上った。「出展企業側で1日4件のアポイントに臨んだ社もあった」とIDEC。
ノートパソコンの開閉や角度調整に使われる特殊なちょうつがい部品を応用したモニタースタンドを出展したオースズ(同市港北区)の鈴木瑞貴社長は、「医療分野は実績が強く問われ、電話ですら(メーカーに)話を聞いてもらえないこともある。こうした機会を生かし、新たな販路を積極的に獲得していきたい」と振り返った。
主催した同市経済局の担当者は「医療分野は参入のハードルは低くないが、高齢化社会で今後の需要拡大が見込める有望な市場。連携を促す取り組みを今後も考えながら、優れた技術を持つ市内中小企業の挑戦をサポートしていきたい」と話した。