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ユースキンのお話(上)
自転車記者が行く・「あなたの肌」の秘密 

社会 | 神奈川新聞 | 2016年1月28日(木) 10:10

先代の野渡良清社長(左)とユースキンの開発を手がけた研究者の綿谷益次郎氏(ユースキン社提供)
先代の野渡良清社長(左)とユースキンの開発を手がけた研究者の綿谷益次郎氏(ユースキン社提供)

 ちょっと臭いのだ。でも、いや、だから効くのだ。良薬、鼻に臭し。その理由と歴史を聞きにうかがった。

 JR川崎駅から歩いて10分ほど。川崎区貝塚に「ユースキン」はある。独特な香りがする、社名と同じハンドクリームを看板とする会社だ。「元は父が薬店をやっていたのが始まりです」。2代目の野渡和義さん(66)が説明してくれる。

 先代の良清氏が太平洋戦争の戦地から復員後、川崎で薬店を開いた。工業の町だけに周辺の工場が使う薬剤、試薬のご用聞きもしていた。ある会社に、薬品に詳しい研究者がいた。先代はひらめいた。当時くみ取り式だった便所では、ハエやウジがわく。「ウジ殺しの薬品を思いつき、その方の協力を得て開発したんです」。これが当たった。

 その後、店にやってきた主婦に手荒れが治らないと相談された。再び研究者に相談して生まれたのがユースキンだった。特徴的な成分にカンフルがある。血行促進や炎症を抑える効果があるが、「着物をしまう時、防虫のために使う樟脳(しょうのう)のにおいがする」。加え白色が一般的な中、ビタミンB2によって黄色くなるクリームも特徴だった。

 1955年に瑞穂科学工業として創立したが、我慢が続いた。自らも営業として尽力した現社長が振り返る。「どこへ行っても、クリームが白ければ売れるのにとか、においが駄目だとか、ね」。使ってさえもらえれば-。とにかく店頭に置いてもらおうと、全国を行脚した。

 持ち上げるつもりはないが、記者は20年近く愛用している。高校のサッカー部でGKをしていて、ひどい手荒れとひび割れに悩んでいた僕の手を救ってくれたのが、ユースキンだった。

 お礼を伝えると「商品名が『あなたの肌』ですから」と野渡社長。その意味なら「ユア・スキン」が本来だと思うが、そこは英語に弱かった先代のご愛嬌(あいきょう)だと笑う。努力のかいあって、今ではハンドクリームの雄となった。次回「下」では、その戦略と社風を記したい。

2013年春まで横浜を疾走していた「自転車記者」が今度は川崎を走り回ります。佐藤将人と塩山麻美が担当します。歴史ある店、面白い人、変わった人、街の不思議…。何でも結構ですので情報提供、大歓迎。連絡先を明記の上、ファクス044(211)0555まで。

 
 

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