
がん患者の身体的、精神的な苦痛を和らげ、生活の質を高めようという緩和ケア。病気を治すという本来的な治療ではないが、抗がん剤の副作用や高額な費用など、さまざまな負担を強いられるがん治療において、その役割は大きい。しかし、患者のみならず医療従事者にも意識が浸透していない現状がある。
「日本の患者はおとなしい」。NPO法人「日本緩和医療学会」の細川豊史理事長は、患者の意識変革が必要と訴える。
緩和ケアの普及啓発を目的に同学会が昨年11月、都内で開催したセミナー。細川理事長は緩和ケアが十分に行われていない現状を説明し、「患者は医療者への気遣いや家族への配慮などから痛みや苦しみをあまり訴えない」と指摘した。その上で、遠慮せず主治医に相談することの大切さを説いた。
国は緩和ケアをこう定義している。
〈患者とその家族の痛みや心のつらさを和らげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア〉
がんと診断されてから2カ月以内を目安とし、早期に始めるのが理想とされ、医師らが相談に乗って精神的なケアをしたり、投薬などで治療の副作用を軽くしたりして、患者の負担を取り除く。
早期からの緩和ケアが世界保健機関(WHO)によって提唱されたのは2002年だが、国内ではまだその認識が広まっていない。統計が物語る。