川崎市内で2014年4月、会社員の男性=当時(24)=がミニバイクで帰宅途中に死亡した事故をめぐり、男性の母親(東京都稲城市)は22日までに、ハローワークの求人票は労働実態と懸け離れた虚偽の内容だったとして、職業安定法違反の疑いで、横浜市都筑区の植栽装飾会社に対する告訴状を警視庁に提出した。
代理人弁護士によると、男性が応募した同社の求人票には、▽試用期間なしの正社員▽マイカー通勤不可▽時間外労働は月平均20時間-などと記されていた。しかし、実際は試用期間があったほか深夜未明の出退勤のためバイク通勤を余儀なくされ、長時間労働が常態化していたといい、母親は「職安法に違反する」と指摘している。
男性は正社員となった1カ月後の14年4月24日朝、同社からミニバイクで帰宅中に川崎市麻生区の県道で電柱に衝突し、死亡した。母親は「労働条件が良さそうと自分が息子に勧めた会社だった」と悔やむ。
現在、男性の事故は過労が原因として、損害賠償を求め横浜地裁川崎支部で争っており、弁護士らでつくるブラック企業対策プロジェクトは「公然と虚偽の求人が行われている現状が、過酷労働を強いる企業に若者が搾取されるブラック企業問題の温床になっている」と訴えている。
厚生労働省によると、ハローワークの求人情報が実際の労働条件と異なるとの相談は14年度に1万2千件を超え、トラブルが多発。同省は職業安定法を改正し、虚偽求人を出した企業に罰則を設けるなどの検討に入っている。
代理人弁護士によると、同様の刑事告訴は全国で2例目とみられるという。