
甘利明経済再生担当相が、都市再生機構(UR)とのトラブル解決の謝礼などとして千葉県の建設会社側から現金計100万円を直接受け取っていたと21日発売の「週刊文春」が報じることが20日、分かった。甘利氏は記者会見し、記事を読んでいないとした上で「調査して国民に疑惑を持たれないよう説明責任を果たしたい」と述べた。
文春は「甘利氏側への現金や接待などは証拠が残っているものだけで1200万円」としており、建設会社の総務担当者は「私がURとの補償交渉で甘利事務所に口利きを依頼し、計1200万円を渡した。裏付けるメモや録音データが残っている」とのコメントを出した。
野党は、安倍晋三首相と全閣僚が出席する21日の参院決算委員会などで甘利氏を追及する方針。国会審議に影響するのは必至だ。
会見で甘利氏は「私自身は国民の皆さまから後ろ指をさされるような行動はしていない」と説明。秘書については「しっかりと調べたい」と話した。進退は「(首相と)全く相談していない」とした。
週刊文春によると、千葉県白井市の建設会社が県道工事をめぐりURとトラブルになったことから、総務担当者が甘利氏の事務所に相談。URから補償金を得られたため、2013年8月に謝礼として500万円を甘利氏の公設秘書に渡したとしている。
また総務担当者は13年11月、甘利氏に謝礼として50万円を渡した。URと新たなトラブルが発生したため、甘利氏に内容を説明した上で14年2月にも50万円を渡したという。
政治資金収支報告書によると、13年8月の500万円のうち200万円は、甘利氏が代表を務める自民党支部と、甘利氏の元秘書の神奈川県議が代表を務める自民党支部に100万円ずつ記載されていたが、残り300万円は記載がなかった。
甘利氏は衆院神奈川13区選出で、11回当選。第2次安倍内閣以降、経済再生担当相を務め、環太平洋連携協定(TPP)の担当閣僚として各国との交渉に当たった。
言葉濁し、落ち着かず
重要閣僚に「政治とカネ」をめぐる疑惑が浮上した。20日夜、内閣府で開かれた甘利明経済再生担当相の記者会見は、週刊誌が報道予定の疑惑について質問が集中。甘利氏は天井を見つめたり、目を閉じて考え込んだりと終始落ち着かず、「発売前なので」と言葉を濁し続けた。
記者会見は予定より約50分遅れでスタート。甘利氏の月例経済報告が終わるとすぐ、報道陣から疑惑の真偽に関する質問が相次いだ。
月例報告の際のよどみない口調は一変。「事実確認が必要」「調査して説明責任を果たす」。15分ほどの間の質疑で「説明責任」という言葉を何度も口にした。さらに「国民国家のため正々堂々と取り組んできた。後ろ指をさされるような行動は今日までしていない」と潔白を訴えた。
現金授受などの有無を何度も尋ねられると、次第にいら立ち、「読んでいません。調査してからです」と強い口調で質問を遮る場面もあった。
秘書の不正があった場合の政治家の責任について問われると「場合によっては」と対応について説明を始めようとしたが、「ここで予断を与える発言は…」とすぐに発言を打ち切った。
「説明責任果たしたい」 甘利氏の一問一答
甘利明経済再生担当相の記者会見での一問一答は次の通り。
-千葉県の建設会社から便宜を図った見返りに金を受け取ったという報道が出るが。
「現物を読んでいない。調査した上で国民に疑惑を持たれないように説明責任を果たしたい」
-建設会社の総務担当者が甘利大臣に50万円を2回手渡したとされる。
「記事が正確にどう指摘しているのか、事実確認が必要だ」
-担当者を知っているか。
「最終的に(記事が)どういう書き方になっているか確認させてほしい。しっかり調査した上で説明責任を果たしたい。これが今、私が言える精いっぱいのことだ」
-国会審議への影響は。
「当然いい影響があるわけはない」
-安倍晋三首相や菅義偉官房長官に相談したのか。
「私は取材を受けていないが、秘書らに取材があったことは伝えた」
-政治資金規正法違反と、あっせん利得処罰法違反の疑いも指摘されている。
「それも読んでない。ミスリードはできない」
-いつ説明するのか。
「明日、全部は解明できないが、説明できることはする」
-首相と進退の相談は。
「全くしていない」
-疑惑を否定するのか。
「国民から後ろ指をさされるような行動は今日までしていない」
-秘書に関しては。
「そこをしっかり調べたいと思う」
-秘書が国民の信頼を裏切る行為をしていた場合の責任は。
「全部確認した上で話したい」