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鉄道コラム 前照灯(237)
中国山地をゆく三江線 天空の駅、存続への祈り

話題 | 神奈川新聞 | 2016年1月16日(土) 22:13

江津始発三次行きのキハ120。あたりはまだ暗い
江津始発三次行きのキハ120。あたりはまだ暗い

 今のうちに書いておかねばならない。廃線話が持ち上がっているからだ。昨年11月、その三江線に乗りに出掛けた。同じ陰陽連絡の因美線や木次線に比べても影が薄い気がする。中国山地に分け入る100キロ余の沿線。江の川に沿う美しい車窓だが、何度も水害に苦しめられてきた


トンネルを出ると宇都井駅ホーム(前方の窓から撮影)
トンネルを出ると宇都井駅ホーム(前方の窓から撮影)

 全通したのは開業から45年後の1975(昭和50年)年。それまでは南北線に分かれていた。気動車は川に浸食された崖の上をそろりそろりと行くが、トンネルで短絡する新線区間に入ると俄然スピードアップする。そんな新旧の顔を併せ持つ線区である。

 島根側の江津から乗った。朝6時の始発。三次まで全線を通す便は1日2本。これに乗り遅れると次は午後3時過ぎまで待たねばならない。キハ120。1両。まだ暗いうちの出発だが、乗客は老若10人余あった

 楽しみの1つは新線区間の宇都井駅だ。峡谷の集落をまたぐ高架にある。地上30メートル。ホームに達するには階段116段を上るほかない。天を目指す塔のような無人駅は奇観でさえある。降りてみたいが、ここで何時間もどう過ごせばよいか分からない。

 そのホームに2人も待っていたのには驚いた。1人は鉄道ファン風。もう1人は地元の年配女性で、三次の教会に通っている。廃止されるかもしれないと聞いて車から三江線利用に切り替えたという。「たとえ私1人でも切符を買って応援してあげたくて」。その祈りが天に届くといい。(F)


宇都井駅眼下の風景(車窓から南西方向を望む)
宇都井駅眼下の風景(車窓から南西方向を望む)
 
 

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