戦後70年を刻んだ2015年は、日本の針路を大きく方向付ける「転機」の年となった。先の大戦への反省に基づく立憲主義を揺るがせた安全保障政策の転換、集団的自衛権行使容認。人口減・高齢化への対応が問われた統一地方選は「候補者不足」「無投票」がかつてなく目立った。大規模な金融緩和、株価上昇の一方で、深刻化する子どもの貧困、格差。東日本大震災から5年を前に政府は原発再稼働へ踏み出した。社説を担当する論説委員が今年を振り返り16年を展望する。
憲法解釈ほご 罪深く
◆安全保障関連法
-集団的自衛権行使容認をめぐり国政は大揺れした。
A 戦後最長の会期延長をした通常国会は安保一色に染まったが、途中から憲法論に軸足が移ったため、安保については結局、議論が深まらなかった。
B 参院での強行採決を取材したが、傲慢(ごうまん)で独裁なやり方と言うほかない。
A 安保関連法は日米防衛協力指針改定合意時点に既定路線となっていたが、国民の不信感を拭えないままの採決はやはり強引だったと言わざるを得ない。
C 一番罪深いのは戦後積み重ねてきた国会答弁や憲法解釈、防衛論議を無意味なものにしたことでは。
B 特定秘密保護法の時と同様に安倍晋三首相は法案通過後に「国民に理解を深めてもらう」と臆面もなく言う。
D 安倍首相は南シナ海での自衛隊活動を「検討する」と発言したが、自衛隊の活動がなし崩し的に拡大しないよう注視したい。
A 自衛隊が世界規模で活動できるようになることで外交の影響力を強めたい外交当局と、日米同盟に基づく日本周辺での防衛態勢を整えたい防衛当局とで考えに違いもうかがえた。
E 政府・与党は憲法に「緊急事態条項」を創設する考えに前向きだ。治安のために国民は、国による権利制限をどこまで許すのか。議論を深めたい。