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高齢者施設3人死亡で市が処分
なぜ転落、残る疑問 川崎市が介護報酬3カ月停止

社会 | 神奈川新聞 | 2015年12月22日(火) 10:44

介護報酬請求の3カ月停止などを定めた指令書を手渡されるアミーユ川崎の運営会社・積和サポートシステムの中坪取締役(左) =川崎市役所
介護報酬請求の3カ月停止などを定めた指令書を手渡されるアミーユ川崎の運営会社・積和サポートシステムの中坪取締役(左) =川崎市役所

 川崎市は21日、入居者3人の転落死などが明らかになった介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」(川崎市幸区)に対し、3カ月間の介護報酬請求の停止を定めた行政処分の指令書を手交した。介護保険法に基づく処分で、期間は2016年2月1日から同4月30日まで。

 同施設では転落死のほか職員による虐待や窃盗が事件化されるなど多くの問題が表面化。市は9月から3度にわたって監査を行ってきた。施設を運営する積和サポートシステムの中坪良太郎取締役は「処分内容を大変重く受け止めている。改善を強く進めていく」と話し、法令順守や社員教育を徹底する意向を示した。

 市健康福祉局高齢者事業推進課の関川真一課長は「行政としては一つの区切りとなるが、地域資源として今後も運営してもらう上で指導を続けていきたい」と話した。

初動捜査「適切だったか」


 入居者3人の転落死や虐待被害が発覚した「Sアミーユ川崎幸町」の問題は市の処分をもってひと区切りを迎えたが、2カ月の間に相次いだ転落死がなぜ起きたのかについては疑問を残したままだ。)


 転落は2014年11月4日に87歳の男性が、同12月9日に86歳の女性が、同31日に96歳の女性が、階下で死亡しているのが発見された。119番通報は午前2時前から4時すぎという時間帯だった。

 ベランダには高さ120センチの手すりが設けられていた。監査に当たった市の担当者は「死亡者は90歳前後で要介護度は2~3。自力歩行ができるとはいえ一人で乗り越えるのは難しい」と語る。いずれも遺書は見つかっていない。

 発見の経緯も不自然な変遷をたどっている。

 施設側は当初、1件目、2件目は入居者の自室である403号室から落ち、3件目は609号室の入居者が601号室から転落したと説明。403号室と601号室は垂直の位置関係にあり、転落した地点はほぼ同じだったという。

 だが市が行った3回目の監査で施設側は「3件目の発見も403号室から確認した」と説明を修正。第1発見者は601号室からナースコールがあったので確認に向かった。入居者に異常はなく、他の部屋を見回ると609号室の入居者の姿が見えなかった。そのため以前も転落があった403号室に向かい、ベランダから下をのぞいたところ、609号の入居者が倒れていたと説明したという。

 第1発見者は「6階から人が転落した」と119番通報しており、説明を変えた理由は不明。施設運営側は「当日の映像が残っているわけでもなく、説明を否定する根拠もないので、そういう動きをしたと市に報告した」。市側は「ナースコールの履歴も残っていない。捜査機関ではないので、確かめることはしないし、そもそもできない」と話す。

 県警は現在、事故と事件の両面で捜査を継続中だが、ある捜査関係者は「立件しようとしても、防犯カメラ映像など行動を裏付ける証拠が乏しく、難しいのでは」とみる。ある幹部は、事故か事件かを見極めるためにも初動捜査が重要だったとし、「軽微な転落事故でも同じ場所で2度も起きたら不審に思う。人が亡くなっているケースにふさわしい初動捜査がなされたとは言い難い」と指摘する。

 
 

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