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アートで性事件根絶訴え 米兵暴行体験の豪女性

社会 | 神奈川新聞 | 2017年1月13日(金) 02:00

作品に込めた思いを説明するフィッシャーさん
作品に込めた思いを説明するフィッシャーさん

 横須賀市内で米兵から性的暴行を受けた体験を持つオーストラリア人女性、キャサリン・ジェーン・フィッシャーさんが、被害根絶を訴えるアート作品の制作を続けている。犯罪被害の体験に苦しむ人たちにとって「生きる力を与える存在になりたい」との思いが、衰えない創作意欲の根にある。

 最近の作品は長さ20メートル、白い布を絞り染めで明るく彩った。

 「人間の心の大きさを表現した」。制作に取りかかったのは、昨年11月の夜。70年ぶりに地球に最接近した大きな月「スーパームーン」が見られた日だった。戦後70年以上が過ぎた今も、在日米軍人による事件が根絶されない現実への悲しみも込めたという。

 横須賀の「どぶ板通り」で2002年、飲み物に薬を入れられ、暴行された。助けを求めた警察署でも屈辱的な扱いを受けた。体に生傷が残ったまま現場へ連れ戻され、写真を撮られた。病院へも連れていかれず、被害の証拠は体から消えていった。

 米海軍の空母「キティホーク」の乗員だった加害者は不起訴となった。民事訴訟を起こし、04年の東京地裁判決で勝訴。だが裁判中に加害者は帰国して除隊していた。見舞金は日本政府から支払われた。

 アーティストでもある母の影響で親しんできた創作活動に、やりきれない思いを重ねて表現し始めた。被害直後の作品には暗さが漂う。癒えない心の傷を表すため、女児用の人形を使った作品では、胸にくぎを打ち込んだこともあった。

 その後、米国で加害者を捜し出し、提訴して暴行の事実を認めさせた。引き換えに受け取った和解金は、1ドルだった。

 徐々に作品の雰囲気も変わっていく。明るい色合いと、笑顔。「私は美しい」とのメッセージも添えた。自責の念に駆られることもある犯罪被害者を勇気づけたい、との思いからだ。

 在日米軍基地が集中する沖縄にも足を運び、米兵が関与する事件の根絶を訴える。「自分は被害を受けても生き残った。同じ被害を受けている人たちに力を与える存在になりたい」


作品に込めた思いを説明するフィッシャーさん
作品に込めた思いを説明するフィッシャーさん
 
 

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