
「戦争のつくりかた」という絵本がある。有事法制の是非が議論された2004年、法案に疑念を持った「りぼん・ぷろじぇくと」が制作し、話題となった。今冬、映像作家の丹下紘希さん(47)らが約7分の短編アニメーションに進化させた。日の丸を背に手に銃を持ち、目に絶望をたたえた兵士の姿が、私たちに訴えることは何か。映像で描かれたのは「日本のひとつの未来像」だ。アニメは12月中旬から「戦争のつくりかた」の公式サイト(http://noddin.jp/war/)で無料公開される。
「りぼん・ぷろじぇくと」の活動に共感していた丹下さんは昨年、10年ぶりに絵本を開いてみた。秘密保護、後方支援、変わる憲法…。今まさに大きなニュースとして騒がれていた話題が物語の中に詰まっていた。「日本は戦争に向かう準備をしている」。胸のざわめきを、東日本大震災後に旧来の価値観にとらわれず、これまでと違う視点を持って生きていたいと立ち上げた「NOddIN(ノディン)」のメンバーに打ち明けた。「違和感を忘れないため映像化しよう」と、約40人とともに短編アニメを作るプロジェクトが動きだした。
監視し合う世界に
<あなたは戦争がどういうものか、知っていますか?>
冒頭のナレーションは静かに問いかける。子どもに語りかけるように、分かりやすくひとつの国が戦争に踏み込んでいく過程を描いていく。
例えば-。国を守るために存在していた自衛隊が、「世界の平和を守るため」「戦争で困っている人を助けるため」と武器を持ち他国に出向くようになる。
戦争をすると決まればテレビやラジオ、新聞は政府が発表した通りのことを伝え、都合が悪いことは言わなくなる。真実は闇に、お互いを監視し合う世界に変わる。
<みかたの国が戦争をするときには、お金をあげたりもします>
メッセージには米軍が構えた銃に、日本兵が硬貨を入れる姿を重ねた。弾に変わったコインは敵に放たれ、血しぶきになる。