1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 時代の正体〈230〉守るべきは平和主義

憲法は今〈下〉映画作家・想田和弘さん
時代の正体〈230〉守るべきは平和主義

社会 | 神奈川新聞 | 2015年11月30日(月) 11:21

この夏、全国的に広がった市民運動のうねりに想田さんは希望を見る =8月7日、国会前
この夏、全国的に広がった市民運動のうねりに想田さんは希望を見る =8月7日、国会前

 映画作家の想田和弘さんはもどかしげに、言う。「護憲派や報道機関が憲法9条にしか反応できなくなっている。極めて由々しき状況だ」。護憲派がとらわれがちな「憲法問題イコール9条問題」「9条を堅持してこその平和憲法」という硬直化した憲法観。守りたいのは憲法の条文か、それとも平和主義か。いまこそ問い直さなければと考える。

 安倍晋三首相が憲法改正の重要課題として、必要性を強調する緊急事態条項。自民党の改正草案の緊急事態条項は、大規模災害時や外国から武力攻撃を受けた際に緊急事態が宣言されると〈内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる〉とし、〈何人も、法律の定めるところにより〉〈国その他公の機関の指示に従わなければならない〉と明記している。

 政権が自らがつくる法令により人権を思うままに制限できるようになる。想田さんは「これが通れば、9条を守ったところで何の意味もなくなる」と指摘する。

 憲法において表現の自由や生存権など基本的人権を保障する条項群を想田さんは「民主主義が生きていくための水や空気に似たもの」に例え、「他方、9条はいわば豪華な付属品だ」。自民党の憲法改正草案は民主的な社会の基盤を攻撃しているのに、目が曇った護憲派やメディアは付属品を守ろうとするばかりで、本当の危機のありかとその深刻さが見えていないと警鐘を鳴らす。

 「何よりも」と想田さんは続ける。「残念ながら、これから守ろうとしている9条はすでに死文化したと言わざるを得ない」

 条文をおさらいする。

 〈一、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 二、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない〉

 素直に読めば、自衛隊を持つことはできず、他国からの攻撃に反撃する通常の個別的自衛権さえ行使は認められない。

 冷戦の激化、朝鮮戦争の勃発が状況を変えた。米国の思惑で警察予備隊が創設され、保安隊を経て自衛隊に改組された。米軍基地や日米安全安保障条約の存在とともに解釈改憲という譲歩を重ね、いずれも合憲としてきたのが戦後日本の平和主義の実情であった。

 そしていま。自民党は歴代政権の憲法解釈の中で最も「無理筋」としてきた集団的自衛権の行使が閣議決定で認められ、自衛隊が海外の戦争に参加する道を開いた。この一手が9条にとどめを刺したと想田さんは考える。

創憲


 「もちろん、9条を根拠に違憲訴訟を起こすなど、安全保障関連法をひっくり返す運動を続けるべきだし、全面的に支持する。ただ、9条の条文を保持したまま、自衛隊はテロの掃討作戦に参加することが可能になったという現実を直視すべきだ。かろうじて歯止めとなってきた9条はもはや機能していない。つまり死んだ。守るべきものがそこに残っていないなら、違う手を打つ必要があるということだ」

 そこで打ち出すのが「創憲」という発想だ。

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題。詳しくはこちら

憲法に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング