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憲法は今〈上〉 映画作家・想田和弘さん
時代の正体〈229〉緊急事態条項、何のため

社会 | 神奈川新聞 | 2015年11月29日(日) 12:06

 現代のファシズムは低温やけどのように気付かぬうちにじわじわと進行する-。日本の現状を「熱狂なきファシズム」と評する映画作家の想田和弘監督はいま、再び警告の鐘を打ち鳴らす。自民党が憲法改正の第1弾として新設に意欲的な緊急事態条項。大災害や他国から武力攻撃を受けた際、首相の権限を強化するもので「これを通せば憲法9条を死守したとしても何の意味もなくなる」。真の狙い、本当の危うさを見極めるべきだと指摘する。

 安倍首相は11日の参院予算委員会で「国民の安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たすべきかを憲法に位置付けることは極めて大切な課題だ」と強調し、来年の参院選後を見据える憲法改正で緊急事態条項創設の論議を最優先させる考えを示した。

 東日本大震災を機に必要性が唱えられるようになった条項は、自民党が2012年に発表した憲法改正草案でこう記されている。

 〈内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる〉 (98条1項)

 〈緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる〉 (99条1項)

 首相が緊急事態を宣言すれば、法律と同等の政令を制定できる-。その危うさを想田さんはナチス・ドイツが成立させた全権委任法になぞらえる。

 「99条1項により、政府は行政権と立法権を一体的に手にすることになる。三権分立の原則を逸脱し、政権はいかなる法律も意のままに成立させることができるようになる」

 ドイツの法律は憲法に規定されている手続き以外にドイツ政府によって制定されうるとした全権委任法は当時、世界で最も民主的とされたワイマール憲法を決定的に無効化させた。

 「たとえば政権に批判的な政敵やジャーナリストを合法的に逮捕し、新聞やテレビ局を閉鎖することができるようになる。独裁体制が作られていきかねない」

 すでにして、NHK会長に安倍首相に近い籾井勝人氏が座り、自民党は政権に批判的な民放に「公平中立な報道」を求めるということが起きている。「解釈改憲による集団的自衛権の行使容認や安全保障関連法案の採決強行を見れば、安倍首相に憲法を守ろうという意思がないのは明らかだ。この条項をどういう権力者が欲し、使おうとしているのかということをよく考えるべきだ」

狙い


 条項では、緊急事態が宣言される事態を武力攻撃、内乱、大規模な自然災害などと想定する。うち、自然災害時は現行の災害対策基本法でも首相が緊急事態の布告を行えることから、法曹界から必要条件とはならないとの指摘が根強い。

 そこで「狙い」として浮かび上がってくるのが、外国からの武力攻撃と内乱のケースだ。実際、安倍首相の参院予算委での答弁の2日後にパリ同時多発テロが起こると、緊急事態条項の不備を日本国憲法の欠点とみなす声が保守系のメディアから上がり始める。

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