犯罪被害者支援の必要性を考える講演会が20日、横浜市中区の市開港記念会館で開かれた。16年前、東名高速の飲酒運転事故で娘2人を失った千葉市の男性(65)と、妻(47)が登壇。悲惨な事故に向き合い続ける苦悩を打ち明け、命の大切さと犯罪のない社会の実現を訴えた。
1999年11月、行楽帰りの男性一家が乗った乗用車に飲酒運転のトラックが追突。長女(当時3)と次女(同1)が命を落とした。事故後、夫妻は全国の遺族らと37万人超の署名を集めて飲酒運転の厳罰化を訴え、危険運転致死傷罪を新設する刑法改正につながった。
「もう二度と犠牲者が出てほしくない。犯罪抑止力の一つになればと願ってきた」。当時の思いを振り返る男性。妻は「何に苦しみ、何を求めているかは個人で異なる」とした上で、「被害者の意思を聴き、尊重することが必要」と呼び掛けた。
実際、署名集めに奔走した夫妻も周囲の支えを求め、身近な人のひと言に救われる多くの出来事を体験してきたという。
妻は「『できることがあれば言ってね』と言ってくれる人はいたが、できることを提案してくれる人は少なかった。一歩踏み込んだ言葉にこそ救われる」。男性は「『(妻を)独りぼっちにしないでくれてありがとう』との言葉をくれた妻の友人に本当に感謝している」と語った。
市などが主催した講演会には約300人が来場し、誰もが当事者となり得る事件や事故の被害者支援に理解を深めた。