
「妄想の自由」を身上に創作してきた作家は怒っている。「ある種の戦前回帰みたいな時代錯誤的な妄想を、実際の政権担当者が現実化しようとしているわけだから」。デビュー作の題名になぞらえて「サヨク」を自任する作家の島田雅彦さんは、中国の覇権主義を十分に認識しながらも、それに対抗すべく安倍晋三政権が手にした集団的自衛権とは別の、より現実的な国家の振る舞いを提案する。すなわち「憲法9条の原則に立ち戻り、外交的英知を積み重ねる」ことだ。
「史上最も好ましくない首相」。今年6月に中国北京で開かれた第3回「東アジア文学フォーラム」の場でそう述べると、たちまちネット上でバッシングされた。やつは反日だ、中国に買われた、と。だが島田さんは意に介さない。「関東大震災の時『井戸に毒を入れた』と言って在日朝鮮人の人たちをリンチした人々と変わらないですね」