子どもたちの理科離れを食い止めようと、横浜市旭区の若葉台団地に住む研究者らが8日、小中学生向けの理科教室を開く。大学から譲り受けた電子顕微鏡を使い、元大学教授がミクロの世界の魅力を伝える。学校も巻き込み、「未来のノーベル賞受賞者が、ここから羽ばたけば」と夢も広がる。
団地内では、NPO法人「若葉台スポーツ・文化クラブ」(南宏市朗理事長)が廃校となった旧若葉台西中学校を拠点に活動。7年前から、若葉台中学校の生徒が先生役となり小学生を対象にした実験教室を開くなど、理科離れを防ぐ企画に一役買ってきた。が、定期開催には至っていなかった。
住民の一人、高塚秀治さん(72)が技官として働いていた東京工業大で、老朽化した電子顕微鏡を廃棄する話を聞きつけたのは昨年末。「本物に触れれば理科に興味を持つ子どもが増えるのでは」と、クラブに引き取り話を持ち掛けた。
通常小中学校で使われる実体顕微鏡は倍率100倍程度なのに対し、電子顕微鏡は倍率2万倍に及ぶ。今回のものは、高さ、幅、奥行きはいずれも120センチ、重さ300キロ。クラブ理事で元エンジニアの堀田陽一さん(67)らは「クラブ内で、自然科学分野のサークル活動の拠点になる」と譲り受けに賛同。旧若葉台西中の理科室に置くことになった。
搬送費は顕微鏡を製造した企業からの寄付に加え、有志も出資。電子顕微鏡のアピール力は大きく、中学校教諭ら協力者も増えてきた。8日の理科教室で講師を務めるのは、やはり団地住民で元大学教授の惣田さん(70)。「電子顕微鏡をのぞくと、新しい世界が開けるはず。将来、ここからノーベル賞受賞者が出るかもしれない」と期待を寄せる。
高額なメンテナンス費用や交換部品が少ないなど、今後の維持管理に懸念もあるが、高塚さんは「この団地には研究者も多く、いろいろな人が集う場を作っていきたい」と意欲を見せる。
◇ 理科教室は「第33回若葉台文化祭」の一環で開催される。旧若葉台西中学校理科室で、午前11時半と午後1時半からの全2回。惣田さんが講演した後、用意されたサンプルを電子顕微鏡で観察する。入場無料。問い合わせは高塚さん電話080(5078)7452。