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亡き妻思い、前へ 逗子ストーカー殺人3年 「再発防止へ職責果たして」

社会 | 神奈川新聞 | 2015年11月6日(金) 03:00

逗子ストーカー殺人から3年=被害女性のフェイスブックから
逗子ストーカー殺人から3年=被害女性のフェイスブックから

 逗子市で女性=当時(33)=が元交際相手の男に刺殺された事件から6日で3年。夫(45)は、愛する人の命を守れなかった自分を責め、悩み、後悔し、それでも前を向こうとしている。「妻の分まで、僕が楽しんで生きていかなきゃいけない」。それが亡き妻の願いであると信じて。

 「周りの人の支えがあってここまでやってこられた。もし、妻が天国で見ているなら、楽しくやっているんだなって思ってくれていると思う」。夫は言葉を一つ一つ確かめるように、今の心境を語った。

 自宅で仏壇の妻に手を合わせる毎日。時折、遺影に向かい、「何をすればよかったのだろう」と考え込んでしまうこともある。いくつもの「たら、れば」が頭をもたげるが、答えは見つからない。

 2人は2008年に結婚し、2年後に逗子市に移り住んだ。女性は雑貨作りなどのワークショップを企画する会社を設立し、共通の趣味を持つ人たちをつなげる場の創設を目指していた。「人と接するのが大好きで、やりたいことが数え切れないほどあった」

 当時、元交際相手の男からメールが執拗(しつよう)に送られてくることは知っていた。でも、命まで奪いに来るとは思ってもいなかった。女性は明るく振る舞い、不安げなそぶりを見せなかった。

 どれほど怖かっただろう。命日が近づくたび、助けられなかった悔しさがこみ上げる。「妻は迷惑を掛けたくないという思いが人一倍強かった。本当は気持ちを見抜いてほしかったのかもしれない」

 今年1月、逗子市納税課から閲覧制限がかかっていた女性の住所を不正に聞き出したとして、偽計業務妨害罪に問われた探偵業の男に執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。判決はこの行為が殺害につながったことにも言及した。

 傍聴するため、裁判が開かれている名古屋地裁に何度も足を運んだ。探偵業の男は納税課から住所を聞き出したことを否定、男に情報を漏らしたとされた納税課職員は「記憶にない」と繰り返した。

 「亡くなった妻のことよりも、自分の身を守ることに必死になっているように見えた。それが何より残念だった」。判決後、探偵業に対する国の規制を求めるコメントを報道機関に出したが、胸にはむなしさばかりが残った。

 事件をきっかけに、連続メールを規制するストーカー規制法ができ、自治体では個人情報の管理を徹底する取り組みが進む。警察庁は精神科医との連携を図るなど加害者の更生に向けた対策を本格化させている。

 「(警察や市役所などの)小さなミスがいくつも運悪く重なって事件が起きてしまった。加害者の心を治療することができればいいが、まずは各自が個々の役目を果たしていくしかない」

 あの日から3年。女性の家族や付き合いのあった友人らが頻繁に自宅を訪れ、仏壇に手を合わせ、思い出話を聞かせてくれる。少しずつ、前を向いて歩いて行こうと思えるようになってきた。

 「ずっと手をつないで同じ道を歩いていく人だと思っていた。心にあいた穴は一生埋まらないが、亡くなった妻がくれた出会いを楽しみながら生きていきたい」。自分に言い聞かせるように、うなずいた。

◆事件で浮かび上がった被害者保護の問題
警察:殺人事件の約1年5カ月前に県警が脅迫容疑で男を逮捕した際、逮捕状に記載されていた女性の結婚後の姓や住所の一部を男の前で読み上げた
保護観察所:捜査機関と情報共有する仕組みがなく、脅迫罪で執行猶予付き有罪判決を受けた男が、保護観察処分で禁止されているメールを女性に大量に送りつけていたことを把握していなかった
自治体:女性の夫をかたった探偵業者からの電話に対し、逗子市の職員が閲覧制限のかかっていた女性の住所を回答、探偵業者から男に住所が伝わった

◆逗子ストーカー殺人事件 2012年11月6日、逗子市のアパートで、セミナーコーディネーターの女性=当時(33)=が元交際相手の男=当時(40)=に刺殺され、男も自殺した。県警は11年6月に脅迫容疑で男を逮捕した際、女性の結婚後の名字や住所の一部を読み上げていた。男は執行猶予付きの有罪判決を受けたが、保護観察中だった12年3~4月に「慰謝料を求めます」などと千通を超えるメールを送信。当時のストーカー規制法ではメールの連続送信が規制対象でなかったことから事件化されず、法改正のきっかけになった。

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