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記憶、風化させない 坂本さん一家殺害26年

社会 | 神奈川新聞 | 2015年11月4日(水) 03:00

坂本弁護士一家の墓前で冥福を祈る同僚弁護士と母さちよさん(中央)=3日、鎌倉市の円覚寺
坂本弁護士一家の墓前で冥福を祈る同僚弁護士と母さちよさん(中央)=3日、鎌倉市の円覚寺

 オウム真理教の教団幹部に殺害された坂本堤弁護士一家の27回忌法要が3日、一家3人が眠る円覚寺(鎌倉市)で営まれた。弁護士仲間や高校時代の同級生ら約50人が参列。坂本弁護士の母さちよさん(83)らは墓前で静かに手を合わせて冥福を祈り、在りし日の一家をしのんだ。

 ことしは坂本弁護士と妻の都子さん、長男の龍彦ちゃんの遺体が、新潟、富山、長野の山中で発見されてから20年。この日の法要では、無事を信じて救出活動に取り組んだ同僚らが、悲惨な事件を風化させないとあらためて誓う姿があった。

 同じ事務所だった岡田尚弁護士(70)は、弁護士になって3年目で命を奪われた後輩について「悩みを抱える人に寄り添い、一緒になって解決を考える弁護士だった。(元気であれば)いい仕事をしたと思う。残念だし無念だ」と悔しさをにじませた。

母さちよさん「もし生きていれば…」

 コスモスが揺れる小高い丘の境内。坂本堤さんの母さちよさんは墓前で数秒手を合わせ、秋晴れの空を見上げた。事件発生から26年。静かな口調で思いを語った。

 天気が良かったことに感謝し、大勢の皆さんが今も変わらずお時間を取って来てくださったことを報告しました。大勢の優しさによって私も生きてこられたものですから、「関わってくださった方たちに感謝だね」と。

 秋になると里芋がおいしい時季ですが、堤は里芋が大好きでした。(実家に)戻ってきたときは、まず鍋のふたを開けて「煮っころがし、上手にできたよ」などと話していたことを思い出します。

 しっかり屋さんの都子さんは、世の中のためになるようなお仕事を一生懸命していたんじゃないかなと思います。龍彦は、生きていればどのくらい大きくなったのか、どんなことを考えているのかなということは常に、思いますね。

 横浜弁護士会の先生方もいろいろな形で活躍されていますが、今も事件で子どもの命が失われるので本当に切なく思います。3カ月に1度くらい、公安担当の方が家に来て(教団の)現状をお話してくださるんですが、(いまなお若い人を勧誘しているなどの)内情を聞くと「何とかならないものなのかな」といらだちのようなものは持っております。

 (26年は)長いといえば長いし、あっという間に過ぎてしまったような気もします。迎えに来てもらいたいと思う部分もあるし、もう少し生きていようかなという思いもあります。

 今月13日、84歳になります。以前はほとんど毎月、お墓参りをしていたんですけどね。(高台の墓地に)上がるのができなくて…。お彼岸やお祝い事のときは来ますけれど、普段は仏壇の前で「ごめんね」と言って過ごしてしまいます。

 (亡くなった)主人も息子も都子さんも音楽をしていました。事件の後に導かれたような気がして、いまは週1回コーラスに通っています。音楽関係の方が堤を慕ってくださっていたことを思い出したり、「こんな音楽が良かったよ」と話をしたりしながら…。

 生きていたらどうなっていたんだろう、何を考えていたのだろうと思いますね。

仲間の悲劇繰り返すな 日弁連、トラブル対策模索

 坂本弁護士一家殺害事件を受け、日弁連は弁護士が逆恨みなどでトラブルに巻き込まれる業務妨害への対策を進めた。最悪の結果を繰り返すまいと、仲間が教訓を伝えようとしている。

 日弁連は一家の遺体発見後、救出活動を発展させる形で弁護士業務妨害対策委員会を設置。事務所ドアの施錠といった被害防止のマニュアルを作成したり、被害を受けた弁護士からの相談に応じたりするなど支援を続けてきた。

 ただ、2010年には横浜市で男性弁護士が担当する離婚訴訟の相手に殺害されたほか、秋田市でも命を奪われる重大事件が発生。12年に実施したアンケートでは、脅迫や強要など全国で170件に上る被害が報告された。感情的な対立の激しい離婚や男女関係の事件に基づくトラブルが最多の25%を占め、近年はインターネット上での中傷や弁護士の名前を悪用した詐欺も増えているという。

 対策委副委員長の瀧澤秀俊弁護士(56)は「実際に被害の渦中にいる弁護士は報告の余裕もないとみられ、件数は氷山の一角だろう。若手も増えており、支援の必要性は高まっている」と指摘。その上で、「法律を武器に戦う弁護士が暴力に屈してしまえば、人権の擁護や社会正義はゆがめられてしまう。業務妨害は弁護士という職能集団の職責への攻撃ととらえるべきだ」と強調する。

 瀧澤弁護士は坂本弁護士と司法修習の同期生で、救出活動の中心メンバーの一人。弁護士会による支援の重要性を訴えてきたのは、坂本弁護士の悲劇を防げなかったかという反省からだ。

 3日も法要に訪れ、墓前でさらなる取り組みの強化を誓った瀧澤弁護士は「対策は万能ではなく、歯がゆい思いもある。身を守るためのノウハウだけでなく、坂本事件の意味や、事件から何を学んだのかということを、経験した我々がもっと伝えていかなければいけない」と前を見据えた。

坂本弁護士一家殺害事件 オウム真理教の信者脱会支援に取り組んでいた坂本堤弁護士=当時(33)=が1989年11月4日未明、横浜市磯子区の自宅アパートで教団幹部に襲われ、妻都子さん=同(29)、長男龍彦ちゃん=同(1)=とともに殺害された。弁護士仲間が救出を目指して活動したが95年9月、3人の遺体は新潟、富山、長野の山中で発見された。一連のオウム裁判によると、教祖の松本智津夫死刑囚が殺害を指示したとされ、実行犯5人も死刑が確定している。

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