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マンション傾く 施工不良、データ虚偽 横浜・都筑区

社会 | 神奈川新聞 | 2015年10月15日(木) 03:00

傾いていることが判明した大型マンション=横浜市都筑区
傾いていることが判明した大型マンション=横浜市都筑区

 三井不動産グループが販売した横浜市都筑区の大型マンションで、建物に傾きが生じていることが14日、分かった。杭(くい)の深さ不足のほか、施工記録に虚偽のデータが使用されていることも判明。市は建築基準法違反の可能性があるとして、事業主の三井不動産レジデンシャルに傾きと施工不良との因果関係や原因の究明、安全性の確認などを求めていく方針。

 市によると、傾いたのは大型商業施設に隣接する最高12階建て、700戸超の大型マンション。全4棟で2007年に完成した。

 住民から相談を受け、市の担当者が8月下旬に現地を確認。西棟と中央棟を結ぶ10階渡り廊下の手すりが上下に約2センチずれていたほか、床の金属連結部が西棟側に約1・5センチ低くなっていたという。

 昨年11月に住民から連絡を受けた同社が、西棟南側の杭28本の地盤調査を実施。6本が固い地盤の「支持層」に届いておらず、2本が届いてはいたが深さが足りないことが分かった。

 施工不良の報告を受け、三井住友建設が施工記録を確認したところ、杭を打ち込んだ際のデータの一部に虚偽が判明。当該の8本を含む西棟の10本、中央棟の18本、南棟の10本の計38本のデータが他の杭を支持層まで打ち込んだ際のデータを転用・加筆したものだった。同社は実際の施工状況を調査する方針。

 安全性について、事業主は「(施工不良の)西棟は震度6~7でも安全」と説明。他の3棟に関しては「地盤調査を実施したい」としている。

 市は国土交通省からの指示も踏まえ、原因究明や建築基準法に適合しているかの報告を求めるとともに、たとえ違反していなくても杭の打ち込み不足に対し行政指導する考え。

 三井不動産広報部は「住民には説明している。対外的に話すことはできない」、三井住友建設広報室は「今の段階では回答を差し控えたい」とコメント。

 杭の施工不良でマンションが傾く事例は、同市西区で昨年6月に発覚している。

住民に不安広がる


 「納得できない。早急に全棟調査し、保証についての説明もしっかりしてほしい」。建物の傾きが判明した大型マンション(横浜市都筑区)の住民に、不安が広がった。資産価値は、耐震強度は-。14日も販売した三井不動産グループによる住民説明会が開かれ、出席者らは表情を曇らせていた。

 傾きがあった棟とは別の棟の一室を約4千万円で購入したという歯科衛生士の女性は、数日前の説明会に参加。建て替える必要性はないとの考えを示した会社側の説明に、「住民の問いに対し、『考えます』と一般的な言葉を連呼するばかり」と不満を口にした。

 別の女性によると、数日前から開かれている説明会では、「どうなっているんだ」「今後、訴訟になるか話し合う必要がある」といった声が相次いだという。西棟の1階に住む男性は、「しっかりと工事すれば建物の価値も下がらないと言われたが、本当に大丈夫なのか」と漏らした。

「チェック体制強化を」専門家


 欠陥マンション問題に詳しい1級建築士の田中正人さん=よこはま建築監理協同組合専務理事=は「あってはならないことが起きた。業者の責任が問われるのはもちろん、現在の建築確認制度にも課題がある」と指摘する。

 杭(くい)の施工は、目で見えないため、さまざまな計測数値に頼らざるを得ない。「施工業者や杭の専門工事業者の計測方法や計測値は適切だったのか」。さらに、計測値を施工業者が不動産会社へどう報告したのか。「万が一、適切な計測データではないことを知りながら報告したなら、偽装にもなり得る」とみる。

 田中さんによると、杭の施工不良は特に分かりにくいという。目視で欠陥が確認できず、建設後の調査も難しい。時間がたってからしか発覚せず、瑕疵(かし)が見つかった場合でも解決は極めて困難だ。

 大手不動産会社が分譲した横浜市西区のマンションでも、2014年に類似の施工不良が発覚したことを踏まえ、「瑕疵が明らかになっていない物件は他にもあり得る」とさらなる広がりを懸念する。

 マンションの瑕疵は、発覚することで価値が下落することを避けたい住民の思惑もあり、露見するケースはそう多くない。「杭施工は特に、公的機関による立ち会い確認の回数を増やしたり、提出書類の項目を詳細にするなど、第三者機関の関与も含め、チェックをより充実させる制度改革が欠かせない」と話す。


西棟(左)と中央棟(右)の手すりに約2センチのずれが生じている(横浜市提供)
西棟(左)と中央棟(右)の手すりに約2センチのずれが生じている(横浜市提供)
 
 

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