【時代の正体取材班=石橋 学】朝鮮人が井戸に毒を入れたという流言を基に市井の人々が凶行に走った関東大震災における朝鮮人虐殺の現場をたどるフィールドワークが4日、横浜市内で行われた。参加者は当時の地図を手に街中を巡り、デマを信じた背景にある偏見・差別意識はかくも人の命を奪うという教訓をいまの日常に重ね合わせて胸に刻んだ。
市民グループ「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」の主催。頭を割られた遺体が欄干に縛り付けられていたという目撃談が市民の手記に残る横浜駅東口の築地橋と、JR鶴見駅近くで起きた「鶴見町事件」の現場を歩いた。
鶴見町事件は震災4日目の9月4日、自警団が居合わせた十数人とともに朝鮮人をこん棒で撲殺したもので、横浜地裁で有罪判決が下っている。裁判資料や当時の新聞記事を基に解説した山本すみ子代表(77)は「殺害方法からも、それを可能にした植民地支配に根ざした人々の意識からも、虐殺という言葉以外では表せない事件」と解説。横浜市教育委員会は現在、朝鮮人虐殺を「殺害」と表記する中学生向け副読本を作成中だが、「目を背けたくなる歴史でも直視しなければ真の反省は生まれない」と強調した。
藤沢市から参加した衛藤雅己さん(56)は在日コリアンへのヘイトスピーチが横行する現状を危惧している。「熊本地震の直後も『朝鮮人が井戸に毒を入れた』というデマがツイッターで拡散した。日常の差別が虐殺に結び付いた歴史を繰り返さないため、日頃から学んでいかなければ」と話していた。