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鉄道コラム「前照灯」(233)新幹線の蜘蛛の糸

社会 | 神奈川新聞 | 2015年10月2日(金) 17:06

ちょっと遠出をした帰りの新幹線で、窓際の席に落ち着き、リクライニングを軽く倒し、お酒は飲まない代わりにキオスクで買ったどら焼きの真空パックを開け、生地に貼り付いている乾燥剤を爪の先で剥がしていると、眼前に体長5ミリぐらいのクモが、すすす、と降下してきた
▼車内清掃が行き届かなかったのか、あるいは誰かの体か荷物にくっついてきたのだろう。虫がたくさんいるような場所をほっつき歩いた乗客がいることは私自身が請け合う。毒グモでもないし、むやみに指でつぶしてはどら焼きの後味が悪い。一寸の虫にも、などと言うまでもなく私は小心者である。気にならないから放っておいた
▼いくつかの駅に停まるうちに車内が混んできた。隣席に旅行帰りらしい妙齢のご婦人が腰を下ろした。ほどなくしてクモの存在に気づいたらしい。当のクモはさっきから、空調と乗客たちの温気が生じさせる微かな空気の流れにあおられ、私と彼女のちょうど真ん中あたりで左右にゆらゆら揺れている
▼私はクモの身を案じ、もとい、いたたまれなくなって、ご婦人がよそ見をした隙に中空にあるはずの見えない糸を引っつかみ、窓の縁に疎開させた。いつまでも車内にいては物騒だから、クモには早めの下車をお勧めした。(さ)

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