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検証・鬼怒川決壊 切迫感伝わらず

社会 | 神奈川新聞 | 2015年9月26日(土) 12:04

鬼怒川氾濫で冠水した地区で孤立していた人を救助する消防隊員=10日午後2時46分、茨城県常総市(共同)
鬼怒川氾濫で冠水した地区で孤立していた人を救助する消防隊員=10日午後2時46分、茨城県常総市(共同)

 防災無線は聞き取れず、大雨特別警報の発表は知らなかった-。今月上旬の関東・東北豪雨で、鬼怒川の堤防決壊による浸水被害を受けた茨城県常総市の住民は口々に言う。氾濫リスクに対する認識が乏しかった上、情報伝達などをめぐる市の不手際も重なり、洪水が起きる切迫感が住民に伝わらなかった。紙一重で命をつないだ人たちは早期避難の大切さをかみしめている。

 「この家はもう駄目。でも命だけは、と」。避難所暮らしを2週間続ける伊藤みきさん(81)が10日に鬼怒川が氾濫したときの心境を振り返る。

 川まで約500メートル。土のう代わりのつもりで玄関前に置いた発泡スチロールの箱と灯油缶は役に立たず、テープで目張りした扉の隙間から入り込んできた川の水は次第にかさを増した。「夫と孫と3人で2階へ上がり、交代で必死にタオルを振り続けた。とにかく早く見つけてほしかった」

 救助のヘリコプターを待つこと5時間余り。つり上げられながら「ああ助かった」とかみしめ、そして悔いた。「まさか川があふれるなんて。(浸水予想範囲を示した)洪水ハザードマップがあるのは知っていたけれど、必要ないと思っていた」。この日午前、車で避難しようとしたが、道路冠水で諦め、逃げるタイミングを逸していた。

 伊藤さんが避難しようとしたきっかけは、防災無線から放送された避難指示。「午前9時ごろだったと思う。でも、その時の雨は強くなかった」。実際には午前8時前には茨城県に大雨特別警報が発表され、気象庁が「重大な危機が差し迫った異常事態」と繰り返し避難行動を呼び掛けていた。

 一方、市からの避難指示は10日午前2時すぎに最初に出されたが、対象地域を細かく区切って発表していた上、防災無線の放送内容は激しい雨音にかき消された。土のう積みの手配などに追われた市がメール配信を怠ったこともあり、自宅の周囲に水が及んで初めて洪水に気付いたという被災者が多い。

 「朝起きたら庭が冠水していたが、高い所なのでそれ以上は増えないと安心していた。特別警報も、避難指示も知らなかった」と、堤防決壊場所に近い矢野一江さん(73)。しばらくすると外に出られないほど水位が上昇しており、自宅も膝上までの床上浸水となった。「もっと早く避難すべきだった」

 決壊地点の下流側に住む落合幸江さん(75)も反省を口にする。「夜中に防災無線に気付いたが、呼び掛けている内容は分からなかった。翌朝、気付いたら浸水していて逃げられなかった。完全に油断していた」。近くの飯村一二夫さん(62)は「(東側を流れる)小貝川は最近、氾濫したことがあるので注意していたが、鬼怒川で洪水が起きるとは想像していなかった。だから堤防が決壊したと聞いた時も、ここまでは浸水しないだろうと思い込み、逃げなかった」。取り残された飯村さんがヘリコプターで救助されたのは、翌11日の午前9時ごろだった。

 災害情報論が専門の吉井博明・東京経済大名誉教授は「雨が降ってから決壊するまでの時間が長かったのに、多くの住民が取り残される結果になったのは大きな問題。人は逃げないということを前提に、あらゆる手段を使って命令口調で繰り返し避難を呼び続けるべきだった」と市の対応を疑問視。「住民の意識を高めるには、ハザードマップを配るだけでは不十分。高いビルを緊急避難場所にしたり、浸水時の水位のラインを電柱に示したり、日ごろから目に見える対策を進めるべきだ」と提言する。

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