
総勢130人の高齢者でつくる合唱団が25日、県立音楽堂(横浜市西区)で高らかな歌声を響かせる。メンバーはすべて県住宅供給公社が運営する介護付き有料老人ホーム入居者で、平均年齢は84歳。超高齢化の進展に伴う認知症や老人性うつの増加といった社会的課題が浮かび上がる中、コーラスへの参加が健康にもたらす効果に期待が高まる。音楽の力をお年寄りの生きがいと交流づくりに-。
「歌うことで気持ちが高まり、毎回練習を楽しみにしている」。初コンサートの本番を直前に控え、土井紀代子さん(74)は声を弾ませる。夫の久徴さん(79)も「ハーモニーを通じて一体感を出したい。コンサート参加者だけでなく、見に来てくれた人ともつながりが強まるのでは」と期待を膨らませる。
土井さん夫婦は、横浜市旭区の介護付き有料老人ホーム「ヴィンテージ・ヴィラ横浜」の入居者。同施設は県住宅供給公社が県内5カ所で運営する老人ホームで最も古く、25年前の開設当初69歳だった平均年齢は84歳へと上がり、約半数が支援や見守りが必要な状況という。
同公社は高齢化による課題対応の一環で、2年前からクラシックコンサートを開催。入居者の関心が高く、生の音楽を聴いて表情が豊かになり、元気づける効果を実感していた。
今年6月からは、介護予防として高齢者によるコーラス隊を編成。大勢の前で歌うことで認知症や老人性うつ(引きこもり)の予防につながる上、発声することによる喉の機能の維持向上効果で誤嚥(ごえん)性肺炎の防止も期待されるという。
参加者は当初50人ほどだったが、入居者同士の交流が深まるにつれて増大し、今は倍以上の130人に膨れ上がった。メンバーは初心者からコーラス経験者まで幅広く、音楽の基礎となる発声から地道に練習を重ねている。
講師を務める若手音楽家グループ代表の陶旭茹さん(26)は「最初は筋肉が衰えて口が大きく開かず、声が細かった。皆さん練習熱心で、2カ月ぐらいの積み重ねにより、5倍ぐらいの声が出るようになった」と評価する。
同公社はこの事業で得たノウハウを生かし、高齢化が進行している団地でも同様の取り組みを検討する予定で、「要支援、要介護とならないような取り組みを進め、地域包括ケアシステムに貢献したい」と話している。