
19日未明に成立した安全保障関連法。参院採決をめぐる与野党の最終攻防は、丸2日以上にわたり、重大局面では肉弾戦も展開された。成立してもなお、多くの国民が不安を募らせる安保政策の大転換。今国会の成立に突き進んだ県内与党議員は硬い表情を崩さず、「理解してもらえるよう、説明を続ける」。無念の野党議員は「民主主義が蹂躙(じゅうりん)されたこの日を忘れない。戦いの始まりだ」と、与党への対抗心をむき出しにした。
「戦争法案、反対」-。19日午前2時すぎ、参院本会議場。記名投票で、法案への反対を意味する青色票を掲げ、社民党の福島瑞穂氏は声を張り上げた。「違憲は認めない」と、民主党の石上俊雄氏も与党席に向かって野太い声を響かせ、「子どもたちのためにも反対」と、同党の牧山弘恵氏が続いた。
対照的に、自民、公明の与党議員は粛々と賛成の白色票を投じ続けた。自衛隊の海外派遣に際し、国会関与の強化で与党と合意した、日本を元気にする会の井上義行氏、無所属の松沢成文氏も賛成に回った。
同2時15分すぎ。「白色票148票、青色票90票、よって…」。山崎正昭議長が投票結果を読み上げ、可決成立を告げると、与党席からは拍手が、野党席からは怒号が起こった。「恥を知れ」。憤まんやるかたない様子の野党議員の抗議の声に背を向け、与党議員は次々と議場を後にした。
「
安倍政権は退陣を」野党「丁寧な説明続ける」与党
「こんな法案に賛成した議員は、次は落選させる。野党が結束して戦争法を廃止し、国民の怒りで安倍政権を退陣させよう」-。安全保障関連法の成立から時間を置かず、社民党の福島瑞穂氏は、国会外で「廃案」の声を上げ続けていた若者グループに合流し、怒りをぶつけた。
「地方公聴会の意見を報告することもせず、めちゃくちゃな答弁に非を鳴らそうとすれば、討論時間を制限して封殺した」。民主党の牧山弘恵氏がそう憤れば、同党の金子洋一氏も「会期はまだ残っている。どうして審議を尽くさないのか」と、与党の拙速に抗議した。
一方、与党議員は努めてポーカーフェースで議場を出た。国民理解が進んでいない現状を踏まえ、異口同音に「丁寧な説明を続ける」と神妙に話した。
自民党の島村大氏は「党の元重鎮からも反対の声があったが、日本の置かれている現実を考えれば必要な法整備だ」と説明。「平和の党」を掲げる公明党の佐々木さやか氏も「平和外交が大前提」とした上で、「与党協議、国会審議を通じて、党として民主的な統制などの歯止めをかけてきた。これからも運用面のチェックが使命」と引き締めた。
「安保法制の本質は戦争抑止。議論を経て最終的に採決するのは政治家の責任だ」。無所属の松沢成文氏も法整備を評価した。
長時間演説で議事進行を遅らせるなどの野党の抵抗戦術には苦言も。「会期の大幅延長で議論は尽くした。国民からのイメージは良くないのでは」(自民・小泉昭男氏)、「土壇場でも、もっと中身のある対応を」(公明・浜田昌良氏)との声が上がった。
「苦渋の決断」として採決を棄権したのは無所属の中西健治氏。「集団的自衛権のすべてを否定しないが、議論は尽くされていない。多くの法案を束ねて、一括で賛否を問われても、意思表示は難しい」と理由を説明した。
