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鉄道コラム「前照灯」(230)夏草の線路

社会 | 神奈川新聞 | 2015年9月11日(金) 08:35

夏草が生い茂る留萌線の線路
夏草が生い茂る留萌線の線路

北海道の夏は短いけれど、だからこそ密度が濃いように思う。植物が繁茂する速度と力が尋常でない…ような気がする。この夏、北海道のいくつかのローカル線に乗ってそう思った
▼線路敷きの両脇に夏草がべったりと這っていた。都会の通勤路線でたまに緑が見えるとホッとするが、人里離れた路線であまりに緑が深いと、むしろ怖くなる。豊かな自然、などと簡単に言う気がしなくなる
▼線路際に枝を伸ばした笹藪が、列車の窓をバシャッとたたく。ローカル線の味わいであり、わびしさでもある。かつて国鉄の保線マンは「線路に草を生やしておくのは恥」と教えられたという。草が根を張って路盤がもろくなる実害もある
▼今や保線作業は極限まで省力化され、恥や美意識が介在する余地はない。バシャッという音は、鉄道から人手が遠のいた音だ。冬枯れの、あるいは雪に閉ざされた車窓も寂しいが、草むした夏の車窓はそれと別種の寂しさをかき立てる
▼留萌線の一部区間の廃止が8月に発表された。人手を削りすぎた揚げ句に事故を多発させたJR北海道は、経営再建の一環で自ら線路を剥がす決断をした。その留萌線の線路も夏草に覆われていた。列車が歩みを止めれば、ローカル線の細道など途端に自然に返るだろう。(さ)

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