
台風18号の接近に伴う不安定な大気の影響で、川崎市内も9日から10日にかけて大雨となった。県と気象庁が発表した土砂災害警戒情報を受け、市は川崎区を除く6区の計28万世帯62万人に避難勧告を発令。小中学校など79カ所で避難所が開設され、最大37世帯83人が避難した。川崎区では住宅など5棟が床上浸水する被害があった。
土砂災害警戒情報は、大雨警報が出ている状況で急傾斜地の崩壊や土石流の危険性が高まった場合、都道府県と気象庁が発表する。市は同情報が発表された段階で避難勧告を発令すると決めており、既に運用を始めている。市危機管理室によると、同情報とともに避難勧告を発令したのは、今回が初めて。担当者は「昨年の広島市の土砂災害も教訓に、空振りを恐れず早めに発令する」としている。
民間の気象情報サービスによると、市内では7日夜の降り始めからの雨量が、幸区・平間消防で334ミリ、中原区・中原区役所で292ミリを記録。9日午後2時55分に土砂災害警戒情報が出され、市は同5時に、幸、中原、高津、宮前、多摩、麻生の6区で土砂災害警戒区域に指定されている28万4464世帯62万6105人に避難勧告を発令した。
避難所は、避難勧告対象地域の小中学校やビジターセンターなど計79カ所で開設。高津区では市内最多の19世帯53人が避難した。同区子母口の市立東橘中学校の武道室には一時、5世帯12人が身を寄せた。避難所職員によると、避難勧告発令直後から住民が集まり始めたといい、市は毛布や飲料水、非常食を配布して対応したという。
自宅近くの崖崩れを心配して避難してきたという清掃作業員の男性(73)は「食事とお茶を買い、通帳とか全財産を持ってきた。風呂も入ってないし、早く帰りたい」とため息をついていた。
避難勧告は10日午後4時半にすべての地域で解除された。