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再建の担い手どこに 連載・復興の道しるべ(1-2)

社会 | 神奈川新聞 | 2015年9月8日(火) 03:00

直面する復興の課題を説明する戸羽市長=8月8日、陸前高田市役所
直面する復興の課題を説明する戸羽市長=8月8日、陸前高田市役所

 68人もの職員と妻の命を奪われた悲嘆にくれる時間もないまま、高台に構えた仮庁舎で旗を振り続けてきた岩手県陸前高田市長、戸羽太(50)。思うに任せない復興の現実に対する不満の矛先は、柔軟さに欠けた法制度、しゃくし定規な国の対応に向く。「当初の2年間は工事を進められなかった。地権者との権利調整が難しく、仮換地計画を作れなかったからだ」

 震災以前のように海際の低地にそのまま住むわけにはいかず、かさ上げによる新市街地の建設と高台への住宅移転を復興の軸に据えたが、苦難の連続だった。

 関係する地権者は2千人以上。中には津波にさらわれた人もいたが、国は移転先の土地を特定する仮換地指定をすべて終えてからの着工を原則とし、それでは事業を進められないとする市は独自に起工承諾を取り付ける形で実現を図った。

 「問題を一つクリアすると、すぐに次の新たな問題が出てきた」。再建する市役所の位置や時期も固まらず、復興計画で市街地再生の重要事業に位置付けたJR大船渡線の復旧は、鉄路からバス高速輸送システム(BRT)への変更が濃厚となった。

 さらに5年間の集中復興期間が来春で終了するのを見据え、国が被災自治体に事業費の一部負担を求めたことにも、戸羽は不満を募らせる。「傷の小さかった自治体は期間内に100%国費で復興事業が終わる。でも、うちのように傷の深いところは終えられず、しかも負担を強いられるというのは、考え方としてどうなのか」

 被災者の男性(65)も、国の対応に疑問を投げ掛ける。「なぜ被災地の現状にもっと目を向け、復興に集中しないのか。オリンピックどころではないはずだ」。歯がゆさを覚えるのは「復興に時間がかかるほど、まちの人たちの士気が低下していく」からだ。

 地区ごとの移転やかさ上げに時間を要する津波浸水地の再生に加え、原発事故対応も重なる東日本大震災の被災地に、過去の震災復興の経験は必ずしも生かせない。

 東日本をしのぐ10万5千人余りが犠牲になった1923年9月の関東大震災で最大の被災地となった東京で進められたのは、国主導の「帝都復興」。市域拡張も含めた「大東京」や「大横浜」の実現に人々は期待を寄せ、100万人ともされた地方への避難民の多くが廃虚の街に戻り、復興の担い手になった。焦土と化した横浜でも、復興はおおむね5年でめどが付いた。

 一方、「創造的復興」が掲げられた95年1月の阪神大震災では、4年後の99年に兵庫県の人口が被災前の水準を回復。20年を経た今なお復興とは何かが問われ続け、150万都市の神戸でさえ人口減少の局面に入っているものの、再生した街並みに傷痕はほぼ見られない。

 国全体が人口減に転じ、急速な少子高齢化や地方からの若者の流出が続く中で起きた東日本の復興で、これまでのような拡大志向の青写真は描けず、小規模自治体は存立の危機にさえ立たされている。

 震災前、2万4千人だった陸前高田の人口は、現在2万人をわずかに超える程度。復興計画に2万5千人台への回復を定めたが、「あくまで目標として掲げただけで、実際はこの数字を前提に施設計画などを立てているのではない」と戸羽は明かす。

 「過疎地域の復興のモデル」を自認する陸前高田の再生を誰がどう担っていくのか。その模索と成否は将来の被災地復興のあり方をも左右する。 =敬称略

 
 

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