
湘南の各海水浴場が今夏の開設期間を終える。飲酒禁止など規制を強化した鎌倉は、来場者数が昨夏から3割減。一方、催しを多数用意して呼び戻しを図った逗子は客足を回復させた。天候不順にサメ出没、さがみ縦貫道路(圏央道)の開通…。風紀改善とにぎわい創出の両立に課題を残しながら、規制のビーチは今シーズンの幕を引く。
■人数より質
今夏の鎌倉が集めた来場者数は、由比ガ浜、材木座、腰越の3海水浴場で計約65万6800人。昨夏(約92万7200人)から29・1%減り、過去10年で最少となった。
今夏から条例で、砂浜での飲酒や音響機器の使用、入れ墨露出を「禁止」と位置づけた規制強化が客足を遠ざけたとみられる。だが鎌倉市観光商工課は「治安・風紀の改善のため、今は人数より質にこだわりたい」。
ビーチに配置する警備員を、昨夏の延べ146人から、今夏は653人に大幅に増員。マナー違反への注意件数は、昨夏の1・7倍の1万252件だった。市は一定の風紀改善が図られたとみて、今後も取り組みに注力する一方、家族連れをターゲットにしたイベントも増やし、集客回復に結びつけたい考えだ。
■注意数1.4倍
昨夏に「日本一厳しい」条例を設けた逗子では、客足は昨夏比17・8%増の約23万7200人だった。規制導入前から半減した客足を取り戻そうと、海上アスレチックや週末ごとのイベントに力を入れた。
目立ったトラブルは起こらなかったが、条例には罰則がなく、砂浜での飲酒禁止を守らない来場者も目立っていたという。警備員による注意件数は6704件で「規制条例初年」の昨夏の1・4倍に増えた。
市総合計画では海水浴場の来場者数目標を「2018年30万人、22年40万人」と堅実に掲げている。規制の内容を浸透させながら、ビーチの質向上と風紀の維持を両立させることが今後の課題となる。
■天候は不順
今夏の湘南の海水浴場にとっては、自然現象も“逆風”だった。シーズン冒頭の7月に相次いで台風に見舞われ、昨夏に14万人が訪れた鎌倉花火大会(23日)は中止になった。8月14日には茅ケ崎沖合でシュモクザメとみられる魚影が30匹超確認され、湘南一帯の海水浴場に一時遊泳禁止などの措置が広がった。
シーズン後半から終盤にかけては曇天が続き、気温も下がったため、客足は鈍り気味だった。大磯への海水浴客は昨夏比23・6%減の約8万8640人にとどまった。藤沢の0片瀬西浜・鵠沼、片瀬東浜、辻堂の3海水浴場でも、前半は昨夏並みに客足が推移したものの、お盆明けには伸び悩んだ。
3月に全線開通したさがみ縦貫道の効果に期待する声もある。茅ケ崎市のサザンビーチちがさきには「八王子や群馬など県外ナンバーの車が増えた」(茅ケ崎市産業振興課)。
茅ケ崎と藤沢、今週末まで開設している平塚の各海水浴場の来場者数は来週以降、順次まとまる予定。