
被爆者が描いた絵や遺品を展示する「原爆と人間展」が28日、そごう横浜店前の新都市プラザ(横浜市西区)で始まった。若い世代に原爆の恐ろしさを伝えようと毎年開催。戦後70年のことし、戦争のむごたらしさを風化させてはならないと、平和の尊さを訴える被爆者の言葉には一層の力がこもっている。31日まで。
広島で被爆した男性が当時着用していたぼろぼろのズボンや熱線を浴び表面が溶けている瓦など、原爆の威力をうかがわせる遺品約20点のほか、被爆者が描いた40点の絵に多くの来場者が見入っていた。
遺体の収容作業に従事した様子を描いたものや亡くなっている赤ん坊をうつろな目で抱く若い母親の絵、黒焦げに変わり果てた母親の遺体を抱いて泣きじゃくり、狂気のようにその体をたたいたという当時中学生だった男性の作品など原爆被害の実態が生々しく表現されている。
「荷車の上の産婦」と題された絵に描かれたのは、へその緒がついたまま苦しんでいる女性と乳児。「幸せは平和のうちにあり。戦争は幸せの破壊者です」との説明文が添えられている。
主催団体の一つ「県原爆被災者の会」の中村雄子会長(83)は13歳のころに広島で被爆。自衛隊による海外での武力行使を可能にする安全保障関連法案が国会で審議されていることについて「危機感を覚える。戦争は殺し殺されるもので、子どもの命が理不尽に奪われる。外交努力で戦争を回避すべきだ」と語った。
会場で被爆者の体験談を聞いた大学生の田中康平さん(23)は「戦後もずっと後遺症で苦しんだと聞き、原爆の恐ろしさを実感した。若い世代の一人として、平和を願う気持ちを引き継いでいきたい」と話していた。
入場無料。午前10時~午後8時(31日は午後3時まで)。問い合わせは、県生活協同組合連合会電話045(473)1031。