同じ答弁が繰り返されたり、質問に正面から答えられなかったり、安全保障関連法案をめぐる議論が深まらない。国会審議を継続してウオッチする倉持麟太郎弁護士(32)は条文の欠陥と現実味を欠く想定に理由があるとみて、「法案の内容」と「政策的な必要性」の観点から法案を検証する。
□■法案の不備
日本が武力を行使するには政府が新たに定めた以下の3要件を満たす必要がある。
(1)わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと-の3点だ。
このうちの(1)は、集団的自衛権の行使を容認するに当たって従来の要件の一つ「わが国に対する急迫不正の侵害があること」を書き換えたものだ。(1)の状況を「存立危機事態」と定義し、この場合に限って集団的自衛権の行使が認められるとした。他国の領土領海で武力を行使することまで全面的に認められるわけではなく、あくまで限定容認であることの根拠となるもので、政府はこの新3要件によって歯止めがかかっていると主張する。