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時代の正体〈160〉残留日本兵の「遺言」 ドキュメンタリーが再上映

社会 | 神奈川新聞 | 2015年8月8日(土) 10:21

残留兵として戦後も中国で内戦を戦った奥村さん。古老の澄んだ瞳はわれわれに残された時間との競争も問うている(蓮ユニバース提供)
残留兵として戦後も中国で内戦を戦った奥村さん。古老の澄んだ瞳はわれわれに残された時間との競争も問うている(蓮ユニバース提供)

 日中戦争を戦い、敗戦後も中国で内戦に巻き込まれた残留日本兵を追ったドキュメンタリー「蟻の兵隊」が8日から横浜ニューテアトル(横浜市中区)でアンコール上映される。残留は軍の強制だったと主張する元兵士たちと自ら志願したにすぎないとする国によって裁判にもなった「日本軍山西省残留問題」を残留兵の一人、奥村和一を通して描く。戦後70年の夏、10年前に撮られた映画が再上映される意味とは-。

 2005年、中国山西省。80歳の奥村がつえを突きながら丘を登っていく。たどり着いたのは、自身が中国人の処刑を強要された場所だった。

 奥村が握っていたつえを銃剣に見立てて再現を始める。

 「こうして、突き刺していく。震えているもんだから、突いてもあばら骨にぶつかってできない。そうすると『何やってんだ』とまたやらされるんです」

 虚空を何度も刺すつえで突き倒さんとしていたものは、戦争がもたらす不条理、その記憶に違いなかった。

■真相求め訪中
 人を人とも思わず、蹂躙する。隣にいる仲間が次々と鬼になっていく。悔恨と恐怖を背負い、戦後を生きた。その奥村にとって最大の不条理は終戦後9年にわたる中国残留だった。

 日中戦争終結時、山西省は中国国民党系軍閥と共産党軍の衝突の舞台となっていた。国民党軍は日本軍の戦力を取り込もうと「北支派遣軍第一軍」の司令官に残留を要請。応じた司令官は「特務団」を編成し、最終的に元日本兵約2600人が内戦を戦った。約4年にわたる内戦で約550人が戦死し、700人以上が捕虜となった。

 帰国した元兵士らは残留は軍命だったとして軍事恩給を求めたが、国は「自ら志願し、勝手に戦争を続けた」「自業自得」とみなし、受け付けなかった。

 カメラは、真相を明らかにしようと中国へ向かった奥村の長い旅を追っていく。

 
 

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