他にはない神奈川のニュースを!神奈川新聞 カナロコ

  1. ホーム
  2. ニュース
  3. 話題
  4. 列車は走るか 陸前高田2015夏

鉄道コラム 前照灯(225)
列車は走るか 陸前高田2015夏

話題 | 神奈川新聞 | 2015年8月7日(金) 23:42

小雨交じりの朝、岩手県陸前高田市内の高田高校前を出発するBRTのバス=2015年7月26日午前6時すぎ
小雨交じりの朝、岩手県陸前高田市内の高田高校前を出発するBRTのバス=2015年7月26日午前6時すぎ

 気仙沼行きの始発バスが高田高校前を出発した。車窓には津波に流された市街地の更地がどこまでも広がる。2015年7月26日午前6時。日曜日の早朝ゆえか乗客はいない。JR大船渡線は東日本大震災以来、陸前高田を走っていない。代替のバス高速輸送システム(BRT)が被災者の足である。


BRTの高田高校前停留所。2015年3月14日改正の時刻表では上下線でそれぞれ一日30本ほどが発着する。停留所の向こうに広大な津波被災地が広がる
BRTの高田高校前停留所。2015年3月14日改正の時刻表では上下線でそれぞれ一日30本ほどが発着する。停留所の向こうに広大な津波被災地が広がる

 「鉄道の本格復旧を断念したい」。JR東日本は24日、沿線自治体に提案した。運休中の気仙沼―盛間に鉄路は戻らずBRTが継続する。復興の将来像が変わる。地元新聞3紙は1面で大きく伝えた。

 消えた市街地で復興のかさ上げ工事が進む。丸ごと10メートルを超える高台にして商店街や住宅地をつくる。近くの小山を崩してベルトコンベヤーで土を運ぶ壮大な事業だ。がれきに埋もれた被災地は巨大な造成地に姿を変えた。


陸前高田市内で津波に襲われ経営するジャズ喫茶を流された冨山勝敏さん。市街地のかさ上げ工事が近くに迫る
陸前高田市内で津波に襲われ経営するジャズ喫茶を流された冨山勝敏さん。市街地のかさ上げ工事が近くに迫る

 「鉄道がないと震災前より活気がなくなる。その昔、家出したとき飛び乗った列車だから愛着もある」。プレハブの復興商店街ですし店主の阿部和明さん(61)は残念がる。駅近くにあった店の本格再建の道はまだ描けない。

 経営するジャズ喫茶を流され仮設住宅で暮らす冨山勝敏さん(73)は言う。「地元のみんなが鉄道を望む気持ちは分かる。ただ多額の費用に見合うのか。BRTより利便性で優れているのか」と。鉄路が運ぶ未来を描く代案は示せるか。(O)


運休区間にあるJR大船渡線陸前矢作駅の待合室掲示板に張られた列車の写真。色あせた様子が鉄路の未来を暗示する
運休区間にあるJR大船渡線陸前矢作駅の待合室掲示板に張られた列車の写真。色あせた様子が鉄路の未来を暗示する
 
 

前照灯に関するその他のニュース

話題に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング