1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 人口減時代(10) 地域とつながる核に

人口減時代(10) 地域とつながる核に

社会 | 神奈川新聞 | 2012年10月4日(木) 17:18

廃校を再生した「森と風のがっこう」。半世紀以上前に建てられた校舎がそのままの形で使われている=岩手県葛巻町
廃校を再生した「森と風のがっこう」。半世紀以上前に建てられた校舎がそのままの形で使われている=岩手県葛巻町

 岩手県北部、葛巻町の上外川(かみそでがわ)集落は、街の中心部から30キロ近く離れた標高約700メートルの山中にある。携帯電話の電波は届かない。手つかずの森を背に、赤い屋根が目印の木造校舎が立つ。

 森の体験を通して自然エネルギーや資源の循環、生命の営みを学ぶエコスクール「森と風のがっこう」。1996年に廃校になった町立小屋瀬小・中学校の上外川分校が、2001年に再生された。

 55年に建った校舎をそのまま使っている。敷地内には太陽光パネルやコンポストトイレ、バイオガス装置を整えた。

 東京や横浜などから単身で訪れる子も多い。校舎を駆け回る街の子どもたちに、畜産業を営む外地幸助さん(77)は目を細める。「子どもの元気なあいさつで、こちらも頑張ろうと思える。歳をとると若い人に頼らなくてはならない。彼らがいることで心強い」

□ ■ 

 葛巻町はかつては酪農の盛んな地だった。だが55年に1万6千人を数えた人口は、現在では7500人。半世紀で半分以下に落ち込んでいた。

 「働く場所がなく、道路事情も悪い」(町教育委員会)環境が、世代交代とともに若年世帯の流出を加速させた。96年に14校を数えた小学校は今は5校。中学校も7校が3校になった。

 上外川集落には13世帯が暮らす。住人の多くは70歳以上だ。「子どもたちの声が消え、夜に真っ暗になった校舎を見るのは寂しかった」。住民の外村和保さん(69)は、廃校の再生を喜ぶ。

 「廃校は人や時間の結節点。『持続可能な開発』を実践する場として、新たに訪れる人と地域がともに携わる形で集落の再生をしたかった」。エコスクールを運営するNPO法人「岩手子ども環境研究所」の理事長、吉成信夫さん(55)は言う。

□ ■ 

 施設は町と集落でつくる運営協議会が借り、NPOが事務局を務める形。資金の6割は民間資本による補助金、4割を自主事業や会費などで賄う。行政に頼る支援は、地元との関係構築を担保する信頼性の供与など限定的だ。

 施設を買い取れば自由度は高く、町のリスクも緩和できたが、住民が関与できる形にこだわった。「『自分たちのもの』と認識してもらい、地域とのつながりを築きたい」。吉成さんは廃校を核にした地域ビジネスの創出をにらむ。

 「小規模でも恵みを受けられるよう、畑や生産加工品をつくり、地元がやっていけるような仕組みをつくっていきたい」

 文部科学省によると、11年度に廃校になった学校は全国で474校。ここ10年間では4709校に上り、うち約30%が未利用のままとなっている。

=おわり

(2012/10/4)

跡地利用に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング