
第4次厚木爆音訴訟の原告や弁護団は30日午後、東京高裁から防衛省に向かった。厚木基地(大和、綾瀬市)での夜間・早朝の自衛隊機の飛行差し止めを命じた控訴審判決を受けた要請活動だった。
「飛行禁止を守ってほしい」。求めた原告側に、対応した同省担当者は「厳しい判決。受け入れがたい」と答えた。
飛行差し止めは一審横浜地裁判決に続く判断。高裁判決では防衛出動や海上警備行動、災害派遣などを「緊急の必要性の高い場合が多い」と理解を示し、「やむを得ない場合」を飛行禁止の例外とした。だが、これも防衛相の判断だけでなく「客観的にも必要性、緊急性の高い行動」と、一審判決より厳しい基準を付けた。ある海自隊員は懸念をのぞかせる。「何が『やむを得ない場合』か、これから慎重に検討せざるを得ない。活動に制限がかかる恐れがある」
厚木基地には現在、海自が哨戒機P3Cや輸送機C130など約40機を配備しているが、一審の判決以前からも原則、午後10時から翌朝6時までは飛ばしていない。
海自によると、飛行禁止時間帯の飛行回数は2014年度で約50回だった。内訳は小笠原諸島(東京都)からの救急搬送や行方不明者の捜索が多くを占める。残りも領海に近づいた外国艦船の監視など、緊急目的に限られている。
中でも救急搬送は総合病院のない小笠原にとって「島民の生命線」(小笠原村)だ。父島、母島には滑走路がなく、夜間には飛行艇も着水できない。ヘリコプターで運び出した急患を硫黄島からP3Cに移してリレーで搬送している。
もっとも、こうした活動への理解は基地周辺住民にもある。ある原告は「救急搬送や人命救助は深夜でも遠慮せずやってほしい」。その裏には、「本当にうるさい米軍機を規制できなければ、騒音問題の解決にはつながらない」との事実がある。