
集団的自衛権行使による海外派兵の具体的な事例として政府が唯一挙げるのがホルムズ海峡での機雷掃海だ。安倍晋三首相は「海外派兵は一般には憲法上許されない」と繰り返す一方、ホルムズ海峡での機雷掃海は「あくまで例外」と強調する。だが、国会審議を追い続ける弁護士の倉持麟太郎さん(32)は「ホルムズ海峡の事例こそ政府がやりたい軍事行動のど真ん中」と指摘する。
「例外」が唯一
機雷とは船舶が接近・接触すると自動か遠隔操作で爆発する水中兵器のこと。自衛隊は世界的にも高度な機雷除去技術を有するとされ、湾岸戦争終結後の1991年にはペルシャ湾へ海上自衛隊の機雷掃海艇4隻が派遣されたことがある。
戦争終結後に派遣されたのは、戦時下で他国の機雷を破壊することは武力行使に当たり、従来の政府見解では海外での武力行使を禁じた憲法上許されない、と解釈されてきたためだ。
それを集団的自衛権を発動することで可能にしようとしている政府の説明はこうだ。
「日本に来る石油の8割、ガスの2割がホルムズ海峡を通過する。滞ると経済的影響にとどまらずライフライン途絶の可能性がある。機雷は多種多様で除去には時間がかかる。湾岸戦争の時は30隻で約7カ月かかった。処理しないと数年から数十年影響が出る」(中谷元・防衛相、6月29日特別委)
政府はこれまで武力行使の3要件として(1)わが国に対する急迫かつ不正の侵害があること(2)これを排除するために他に適当な手段がないこと(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと-を挙げてきた。
集団的自衛権行使を解禁するに当たって新3要件として(1)を「わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」に書き換えた。海峡が機雷で封鎖され輸入される石油が途絶えることで新3要件の「国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」に該当するというのが、集団的自衛権の行使と機雷掃海実施する政府の理屈だ。