川崎市と昭和電工(東京都港区)は28日、水素を活用した低炭素社会の実現に向けた協定を結んだ。同社川崎事業所(川崎区扇町)で生産する水素をパイプラインで臨海部の企業などに供給するエネルギー循環型の仕組みを構築。施設整備や技術実証などを進め、早ければ2020年度の実用化を目指す。
同事業所は03年から、アンモニアの製造工程で使用済みプラスチックを原料とする低炭素水素を生産。本年度、このノウハウを生かした「地域循環型水素地産地消モデル実証事業」が環境省に採択されたため、市と連携して化石燃料を主とする臨海部のエネルギー転換に本腰を入れる。
市スマートシティ戦略室によると、地域から回収した廃プラを利用して同事業所で水素を製造。パイプラインを通じて参加企業などに燃料電池用のエネルギーとして継続的に供給する仕組みだ。供給を受ける企業が排出する廃プラを同事業所に戻す循環型のモデルも描く。
同事業所の水素生産能力は年間1億立方メートルで、余剰水素を使った技術実証を16年度に開始する予定。新たに水素精製設備やパイプライン関連施設を整備し、燃料電池に適した純度の高い水素の生産に取り組む。同社広報室は「川崎の皆さまに貢献できる会社を目指し、地域環境への負荷軽減に寄与していきたい」としている。
市は今後、臨海部の企業に参加を呼び掛けるなど、実証事業の調整機能を担う。同室は「アンモニア生産に続き、廃プラ由来の水素を活用するセカンドステップ。全国のモデルケースとなる循環型水素社会を構築したい」としている。